約 14,823 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1907.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情 番外編:上条さん地獄の10日間 EXTRA EDITION_1(二日目:ナイトドライブ) 『ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ』 (琴)「ハイ、じゃあ今日はここまでね」 (上)「お、終わったァ……」 (琴)「当麻、お疲れ様」 (上)「ホント、疲れた~……」 (琴)「これくらいで何言ってんのよ。明日からはもっとビシビシやるわよ」 (上)「う゛……」 (琴)「ホント……勉強になるとだらしないんだから……」 (上)「うう……だってよぉ……」 (琴)「コレでもかなり優しくしてあげてるつもりなんですけど?」 (上)「た、確かに付き合う前はもっとキツかったけどさ……」 (琴)「だってぇ……当麻ったら、すぐに『オレはレベル0だから』とかって言い訳ばっかりなんだもん……」 (上)「あ……そ、それはさあ……」 (琴)「でもさ……イジけた当麻もちょっとカワイかったりして……、そうなるとイジめたくなるのよね……」 (上)「……不幸だ……」 (琴)「……やっぱり……カワイイ。(じーーーーーーーっ)」 (上)(うっ……、な、何だ……その視線は?) (琴)「じーーーーーーーーーーーーーっ」 (上)(あ……も、もしかして……) (琴)「じーーーーーーーーーーーーーっ」 (上)「美琴……コッチ、来るか?」 (琴)「うんッ!!!」 上条の地獄の集中補習が始まって二日目。 【喫茶店エトワール】裏の警備員(アンチスキル)詰め所で行われている上条の課題対策も同じく二日目である。 本来なら、机の一角を使って、肩を並べて……と行きたいところなのだが……。 アッコさんからも言われた通り、勉強中は『イチャイチャ禁止令』が出てしまっている。 その為、美琴が必要以上に上条に近付くとペナルティが科せられるようになっていて、そのペナルティが三つ以上になると、アイスホッケーのように上条は『ペナルティ・ボックス』に閉じ込められてしまい、美琴と離されてしまうのだ。 そして二人は同室にいるにも関わらず、15分間の『顔を合わせられないペナルティ』を喰らわされる。 昨日の夜はこの仕掛けを知らずに、『イチャイチャモード』が展開してしまったため、早々に上条は『ペナルティ・ボックス』に閉じ込められた。 上条も驚いたが、それ以上に美琴のパニックぶりはスゴかった。 せっかく一緒に勉強出来ると思っていたのに、いきなり上条がドコかに連れ去られてしまった。 その上、いつまで経っても帰って来ない。 正に『おあずけ』を喰った形になった美琴は、15分後に現れた上条に思わず抱きついてしまった。 すると、再び上条は『ペナルティ・ボックス』行きとなり、美琴は再び『おあずけ』を喰らうハメになった。 そして再び15分後に上条が現れると、美琴が思わず抱きついて、またまた上条は『ペナルティ・ボックス』行きになる。 ……コレを延々と繰り返しそうになった。 さすがに3度目に溜息混じりのアッコさんからの忠告があって、その後二人(主に美琴)は必死で『イチャイチャ』をガマンしながら勉強に勤しんだのである。 つまり、課題に取り組んでいる間は、二人は『イチャイチャ禁止令』に縛られており、側にも寄れないのだ。 さすがにコレは『学園都市最強のバカップル』にキツかったようで、昨日も今日も勉強が終わると美琴はそれまでの『おあずけ』を一気に解消すべく行動に出る事になる。 だが、自分から行動を起こすのは恥ずかしいらしく、上条に無言の訴えを投げかけるのだ。 昨日はその美琴からの無言の訴えが分からず、ふくれっ面と共に『電撃の槍』を浴びせられた(部屋は耐電処理されているので無事)上条だったが、さすがに今日は気付いたようだ。 しかし……誰だ? こんな仕掛けを考えたのは……。 (琴)「エヘヘ……当麻ぁ……」 (上)「スゴい甘えッぷりだな……」 (琴)「だってぇ……」 (上)「オレも……実はさ……」 (琴)「うん……」 (上)「美琴……」 (琴)「当麻……」 『キュッ』と抱き合う二人。 補習期間という『不幸』の中で、シッカリ『幸せ』を満喫している。 (ア)「そろそろ満足したかなぁ~?」 (上琴)『『ボンッ!!!(////////////////////)』』 (琴)「あ、ああああああああ、ああああああああああああアッコしゃん……」 (ア)「ンッフッフッフ~、ビックリして離れるかと思ったら、抱き合ったままなの? そりゃあれだけ『おあずけ』を喰らっちゃったらねぇ……」 (上琴)「「あうあう……」」 (上)「あ、あの……アッコさん……? も、もしかして……」 (ア)「うん、ずっと見てたわよん♪」 (琴)「あうあう……」 (ア)「結婚式に見せるビデオがまた増えちゃったわね」 (上琴)「「見せないッ!!!!!」」 (上)「第一、この補習が終わったら消すんじゃなかったのかよ……」 (琴)「コピー取らないんなら残しておきたい気もするけど……」 (上)「え゛!?」 (琴)「当麻が私と結婚するのを躊躇ったら、私を弄んだ証拠として……ブツブツ……」 (上)「み、美琴さん……何を仰っておられるのでせう?」 (琴)「当麻が『コッチにおいで』って言ったから、私は仕方無く当麻の側に行って……そしたら抱き締められて……ブツブツ……」 (上)「あ、あの視線は……無視ですか?」 (琴)「当麻のご両親にこのビデオを送りつけて……そしたら……ブツブツ……」 (上)「何、とんでもないコト考えてんだッ!?」 (琴)「とっ、当麻がッ……私をお嫁さんにするって言ってくれたら……ブツブツ……」 (上)「(もう、そのつもりだよッ)」 (琴)「ヘッ!? 何か言った? 当麻」 (上)「何でもねえよッ!!!!!(////////////////////)」 (ア)(あ~あ、上条君、言っちゃえばいいのに……。……でも、あのバカもなかなか言ってくれなかったもんなぁ……プロポーズ。男ってどうしてこんなに鈍感なのかな?) (マ)「オーイ、そろそろ帰らねえと遅くなっちまうぞー」 (ア)「ボンッ!!!(////////////////////)」 (マ)「ヘッ!? 何赤くなってんだ?」 (ア)「うッ、ウルサいわねッ!!!」 (マ)「ヘッ!?」 (ア)「きょっ、今日はアンタが二人とも送りなさいよッ!!! もうちょっと二人で居させてあげてもイイだろうからさッ!!!」 (マ)「お、おう……えッ!? でも何で、オレが……」 (ア)「あッ、アタシは……その、ちょっとする事があるからッ……イイわねッ!!!」 (マ)「あ、ああ……ゎ、分かった……」 (上琴)「「……」」 (マ)「アレ……? なあ、オレ……何かしたか?」 (上琴)「「さあ……?」」 (マ)「まあ、イイか。……それじゃあ、二人とも裏で待ってるからな」 そう言うとマスターはそのまま部屋を出ていった。 『ポツン』と取り残された二人は……。 (琴)「と、当麻……」 (上)「何だよ……美琴……」 (琴)「マスターってさ……」 (上)「あ、ああ……」 (琴)「当麻より鈍感かもね……」 (上)「……だな」 (琴)「アッコさん……苦労してるんだろうなぁ……」 (上)「うん……そうだな……」 ……ところで…… お二人さん……。 いつまで、抱き合ってるの? (上琴)「「あうあう……」」 『ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーン』 二人が店の裏に回ると、そこには『HsSSV-03(ドラゴンドライブ)』が有った。 それを見て上条はガックリと肩を落とし、美琴は眼をキラキラと輝かせている。 (琴)「マスター、コレで送ってくれるのッ!?」 (マ)「ああ、そうだけど……上条、どうした?」 (上)「一昨日の悪夢が……」 (マ)「何言ってんだ? オマエ……」 (上)「あ……アハハ、アハハハハ……ハァ……」 (琴)「ホント、だらしないんだから……」 (上)「そう言うけどよぉ……」 (マ)「何かあったのか?」 (琴)「一昨日、この車でココまで送って貰った時に、黄泉川先生……だっけ……。あの人が運転してたんだけど、ジェットコースターみたいで面白かったのよ」 (上)「オレは死ぬかと思った……」 (マ)「非装備モードでの臨界だな……。黄泉川のヤツ、テストとか何とか言って……自分が楽しんでただけじゃねえのか?」 (上)「え゛……」 (マ)「安心しろよ。そんなに飛ばさねえって。……第一、オレは黄泉川ほど、運転上手くねえからさ」 (琴)「えーーッ? つまんない」 (マ)「何だよ? 嬢ちゃんはそっちがお気に入りなのか?」 (琴)「だってぇ……面白かったんだもん……」 (上)「あ、アレを面白いで済まさないで欲しい……」 (琴)「ねえ、マスター……、またやって欲しいな。ジェットコースター」 (マ)「悪いが嬢ちゃん、それはダメだ」 (琴)「え?」 (マ)「アレは黄泉川が乗ってたから出来たんだ。現役の警備員(アンチスキル)が搭乗してるから、サイレンも鳴らせるし警告灯も回転させられるんだ。オレにはそれをする資格がねえ」 (琴)「コマンダーだったのに?」 (マ)「だ・か・ら……今はタダの喫茶店のオヤジなの!!! 他に保管するところがねえから預かってるだけで……保管する限りは好きに使ってイイとは言われてるがよ……」 (琴)「だったら、バレなきゃイイじゃない」 (マ)「オイオイ……常盤台のお嬢様の台詞じゃねえぞ。……オイ、上条……何とか言えよ」 (上)「無理……。こうなった美琴は何を言っても無駄……」 (マ)「じゃあ、諦めるのは……オマエだな」 (上)「え゛……?」 (マ)「ホレ、乗った、乗った。明日もあるんだから、あんまり遅くなる訳にも行かないからな」 (琴)「ヤッタァ~! ジェットコースターだぁ~~~」 (上)「ふ、不幸だ……」 オイオイ、警備員の資格はイイのかよ……。 というツッコミを無視して、マスターは『ドラゴンドライブ』を発進させる。 美琴と当麻はシッカリ後部座席に並んで座っている。 『ヒュイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーン……』 (マ)「まあ、オレも必要な装備してねえから、通常モードだけどな」 (琴)「イイの、イイの。エヘヘ……楽しみィ~」 (マ)「コリャ、確かに何言っても無駄だな……。分かったよ、ちょっとだけだぞ」 とマスターが言った時だった。 急に通信が入ってきた。 『ザザッ……第三学区で宝石強盗事件発生。犯人は第七学区方面に逃走中……ザッ……』 『ザッ……犯人グループは白のワゴン車で、ナンバーは……ザザッ』 (マ)「宝石泥棒って……珍しいな……」 (琴)「物騒ねぇ……」 (上)「不幸だ……」 (マ)「何か、上条だけ会話になってない気がするんだが……」 (琴)「イイから、イイから。ねぇ、マスター、早くゥ~」 (マ)「しょうがねぇなぁ……。ホンじゃイッチョ行くか!」 (上)「えッ!? ちょっと待って。心の準備があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」 『ゴワッ!!!』 上条の叫び声と共にフル加速に移る『ドラゴンドライブ』 (琴)「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」 美琴は大喜びである。 一方上条は…… (上)「……」 ……気絶してるね……。 上条が気絶し美琴が喜んでいる時、対向車線に多くの青い回転灯が見えた。 どうやら、逃走中の犯人の車を補足したらしい。 (マ)「コリャ、時間の問題だな」 そうマスターが呟いた時、異変が起こった。 交差点の左から、いきなり大型の重機っぽい駆動鎧(パワードスーツ)が飛び出て来たのである。 (マ)「チッ!」 マスターは瞬時に『ドラゴンドライブ』を180°回転させると、後方の加速用バーニアを展開、フル制動に入る。 『ドラゴンドライブ』は重機っぽい駆動鎧の出て来た交差点の数メートル手前で停止する。 (琴)「くぅッ!? ……あッ、……アレは……」 (マ)「アレって、レイバー(多足歩行式大型マニピュレータ)の改造版じゃねえかよ……。あんなモン、どっから?」 (琴)「れ、レイバー?」 (マ)「学園都市の切り売りした技術を使って、外の世界で作られた人型の重機だよ。建設現場じゃかなり役に立ってるらしいぜ」 (琴)「アレって……逆輸入だったんだ……」 (マ)「何だよ、嬢ちゃん。アレ、知ってんのか?」 (琴)「ぅ、うん……。前にちょっとね……」 (マ)「フーン、……で、どうするんだ?」 (琴)「もちろん……」 (マ)「もちろん?」 (琴)「追っかけるに決まってるじゃない!!!」 (上)「ふえッ……アレッ、ど、どうしたんだ……?」 (マ)「だろうなッ!!!」 (上)「え……、あの、なに……、何がどうなってるんでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」 目が覚めた途端に、再びのフル加速を経験させられる上条さん。 カワイそうに……。 一方、マスターはフル加速に移りながら、様々な指示を出していた。 (マ)「ボギー」 (ボギー:以下ボと略)『ハイ、マスター』 (マ)「後部シートのシートベルトにセーフティ・バーを追加しろ。そして、簡易の耐G装備に変更」 (ボ)『了解しました。マスター』 (琴)「マスター、誰と話してるの?」 美琴が疑問を投げかける。 (マ)「コイツのAI(人工知能)さ。標準装備じゃなく、オレ専用だけどな」 (琴)「マスター専用のAI?」 (マ)「ああそうさ。オレが現役時代からの相棒でな。旧世代なんだが、コイツだと無理が通るんでな。……楽しめるシチェーションだ」 (琴)「ィヤッタァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!」 (上)「降ろしてくれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!」 と、上条が叫んだら後部座席にジェットコースターの安全バーのようなモノが降りてきて、シートに完全に固定される。 と同時に首や肩を柔らかいクッションで保護される。 但し、その分首は動かせなくなり、視線は正面に固定される。 (上)「あ、あの……マスター……。首が……」 (マ)「しばらくガマンしろ。折れるよりマシだろ? 怖かったら、目を瞑っていろ」 (上)「え゛……」 (マ)「ボギー。パワーゲインセーフティを『ステージ1』に変更。セーブモードは解除だ」 (ボ)『了解しました。ですが、マスターの装備がそれに合っておりませんが?』 (マ)「構わねえよ。いつもの事だ」 (ボ)『了解です。セーフティ解除。パワーゲイン『ステージ1』に移行。3、2、1、システムオールグリーン。解除完了』 (マ)「リニアシステム起動。機体高度は30センチを基本に確保。後部ウィングのレールバンカーのセーフティ解除」 (ボ)『了解しました。リニアシステム起動。機体高度は30センチを確保。レールバンカーのセーフティ解除。解除完了。戦闘形態ステージ1準備完了』 (マ)「それじゃあまあ……チョットだけ、本気で行きますかッ!!!」 マスターはそう言うと、アクセルペダルを一気に踏み込む。 先程、制動に使った後方のバーニアがフルブーストされ、今までとは比較にならないGが全員に掛かる。 加速途中に数台の警備員のパトカーがスクラップにされていたのが一瞬だが見えた。 どうやら重機レイバーにやられたようだ。 (マ)「オイオイ……やられっ放しかよ……」 (上)「あ、あの……マスター……?」 (マ)「ア? どうした、上条?」 (上)「スゲえ、つまんねえ事聞くけど……さ……」 (マ)「ああ」 (上)「この車って……今、走ってんの? それとも……飛んでんの?」 (マ)「時速300キロを軽く超えてんだ。この速度で路面のギャップを拾ったらどうなると思う?」 (上)「今サラッと……スゴいコト言わなかった?」 (マ)「えッ?」 (上)「時速……何キロ超えてるって……?」 (マ)「もう一度聞くか?」 (上)「イ、イヤ……イイです……」 (琴)「キャーーーーッ、時速300キロ超えなんて、地上じゃ初体験だぁ~~~~~~~ッ」 (上)「美琴ォ……。ふ、不幸だ……ぐえッ!?」 上条が悲鳴を上げた理由は……。 前方から飛んできた、重機レイバーのアームの残骸を『ヒラリ』と華麗に避ける『ドラゴンドライブ』 機体性能にはまだまだ余裕があるようだ。 だが……、乗っている人間は……そうは行かない。 (琴)「キャァア~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ! た~のしィ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!」 ……でもないようです……。 若干一名を除けば……。 (マ)「ボギー。通信回線を開け」 (ボ)『了解しました。マスター』 (マ)「前方の追跡中のパトカー。運転手は……黄泉川か?」 (黄)『ザザッ……こ、コマンダー!?』 (マ)「やっぱりそうか。黄泉川、デカ物はオレが引き受ける。前のワンボックスを追え!!!」 (黄)『でッ、ですが……』 (マ)「心配すんなって。コッチはコレに乗ってるんだからな」 (黄)『了解しました。ではお願いいたします!!!』 (マ)「オレの後ろに付け!!! 3カウントでヤツを止めるから、そのスキに前に出ろ!!!」 (黄)『了解!!!』 (マ)「嬢ちゃん、上条。しっかり掴まってろよ!!!」 (琴)「な、何をするの?」 (マ)「レールバンカーぶち込んで、コイツの足を止める!!!」 (琴)「やりたいッ!!!」 (上・マ)「「ハァ!?」」 (琴)「私にやらせて!!! その『レールバンカー』を撃つのッ!!!」 (マ)「あ、あのなぁ……」 (上)「マスター……、諦めて……。美琴の眼がキラキラしてるから……」 (マ)「わーったよ……。ッたく、ボギー! 後部右座席に『レールバンカー』の照準を渡せ!!!」 (ボ)『了解しました。マスター』 (マ)「両肩の稼働部の付け根に照準を合わせろ!!! バンカーが突き抜けた瞬間にフックが掛かる。その時に全力制動でヤツを止める!!!」 (琴)「任せて!!!」 (マ)「照準をロックしたら、3カウントで撃て!!!」 マスターがそう言った途端、前を行く大型重機レイバーが機体を大きく左右に振り始めた。 どうやら、ロックオン用のレーザーを感知したらしい。 ところが…… (琴)(えッ!? 照準から……外れない? シッカリ追尾してる) 『ドラゴンドライブ』の機体も大きく左右に振れる。 乗っている上条も美琴も身体を左右に持って行かれそうになる。 だが……身体はシートに支えられ、照準は外れることなく、大型レイバーの機体を追尾し続けている。 (琴)(マスターがスゴいんだ。マスターが大型レイバーの動きを先読みしてるんだ……) (マ)「ヘッ。さすがに黄泉川だな。シッカリ付いて来やがるぜ」 (上琴)「「えッ!?」」 (琴)(冗談でしょ? この状況下で後ろの事まで把握出来るなんて……) (マ)「嬢ちゃん、急げよ。後ろがシビレ切らしてるぜ!!!」 (琴)「アッ!? ハイッ!!! ……照準、ロックオン!!!」 (マ)「スリーカウント!!!」 (琴)「3・2・1・行っけぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!」 まるで『超電磁砲(レールガン)』を撃つように美琴が叫び、トリガーを引く。 見慣れたオレンジ色の閃光と共に、打ち出された『レールバンカー』が大型重機レイバーの肩を貫く。 と同時にマスターが叫ぶ。 (マ)「黄泉川!!!」 (黄)『了解!!!!!』 マスターは『ドラゴンドライブ』の前方のバーニアをフル稼働させると同時にタイヤを接地させ、フルブレーキングを敢行する。 黄泉川のパトカーはその横をすり抜けてゆく。 大型重機レイバーは撃たれた事に動揺していたのか、黄泉川のパトカーをそのまま通過させるしかなかった。 一方『ドラゴンドライブ』は先程から全力制動に入っている。 だが、相手は大型の重機レイバー。 重量差があり過ぎる。 そう簡単には止まらない……。 ……はずだった。 だが……、重機レイバーが『ドラゴンドライブ』を引き剥がそうと前方に加重を移そうとしたその一瞬前 (マ)「ワイヤー、切り離せ!!! ボギー!!!!!」 (ボ)『了解しました。マスター』 機械的な音声が応えた途端、大型重機レイバーは前方ですっ転んでいた。 自分の身体を支えようと出した両腕は、肩から無残に折れてしまっている。 『ギャギャギャギャ、ガガガガガガ……』 大きな音と共に転がる大型重機レイバー。 それを見ていたマスターが、ハンドルに付いたトリガーを引く。 (ボ)『ピーピング・トム射出。ターゲットに命中確認。コレよりハッキングを開始します』 (マ)「終わりだ」 そう言うとマスターは『ドラゴンドライブ』を完全に停止させる。 そして、外に出て胸ポケットからタバコを取り出し、火を点ける。 (マ)「ふぅ~~~~~~~~~。やっぱ、この一服はやめられねえな」 そうマスターが呟いた時、通信が入ってきた。 (黄)『ザザッ……コマンダー、コチラも犯人確保完了しました」 (マ)「早ええな……。手荒なコトはしてねえだろうな?」 (黄)『コマンダー程ではありません。犯人は一応生きております』 (マ)「それならイイ」 (上)「イイのかよッ!?」 (マ)「後は任せるぜ。イイよな?」 (黄)『了解しました。……あ、あの……コマンダー……?』 (マ)「何だよ? 黄泉川」 (黄)『子供達にあまりこの機材を扱わせるのは……如何なものかと……』 (マ)「あ……やっぱりバレてた?」 (黄)「相変わらずですね……そう言うところは……」 (マ)「まぁ、そう言うな。それだけオレが、コイツらを信頼してるってコトさ。でなきゃ、照準を任せる訳がねえだろ?」 (黄)『確かに……』 (マ)「じゃあな、黄泉川」 (黄)『レールバンカーを撃った子にお伝え下さい。良い腕だったと』 (マ)「ああ、分かった……『ピッ』……だとよ、嬢ちゃん」 (琴)「エヘヘ……」 (マ)「上条もよく頑張ったな」 (上)「え? お、オレ……オレは何にもしてねえけど?」 (マ)「良く言うぜ。照準を合わせてる時、嬢ちゃんの手をシッカリ握ってやってたクセによぉ?」 (上琴)『『ボンッ!!!(////////////////////////////////////////)』』 (琴)「み、見てたの……マスター(////////////////////)」 (上)「アハハハ……(////////////////////)」 (マ)「ほら、サッサと帰るぞ。でねえと事情聴取されちまうからな」 (琴)「あ……」 (上)「それは困る……」 (マ)「さあ、乗った乗った」 (上)「あ、あのさ……マスター」 『ドラゴンドライブ』に乗りながら上条が聞く。 後部シートは普通の状態に戻っていた。 (上)「あの大型重機レイバー、派手に前にすっ転んだけどさ……」 (マ)「ああ、アレか」 (上)「ああいうのってさ、普通は中のAIが制御してるモンなんだろ? あんな風に転ぶなんてさ……」 (琴)「マスターよ……」 (上)「ヘッ?」 (琴)「照準を合わせてた時に分かったの。全制動をかけるための前方バーニアをあの重機レイバーの膝に向けてたのよね? マスター」 (マ)「まあな……」 (琴)「バーニアの熱で膝の駆動部が溶けて、ほとんど動かなくなってたから、ワイヤーが離された途端に制御出来なくなって、すっ転んだって訳……」 (上)「へえ……あの瞬間にそこまで……スゲえな」 (琴)「普段はただのボケオヤジにしか見えないのにね……」 (マ)「褒めるか、貶すかどっちかにしろよ。オマエら……」 (上琴)「「アハハ……」」 (マ)「んじゃ、行くぞ」 そう言ってマスターは『ドラゴンドライブ』を発進させる。 先程のようにGが掛かる速度ではない。 (琴)「ねえ、マスタァ~」 (マ)「もうダメ。さすがにこれ以上は嬢ちゃんの頼みでもダメだ」 (琴)「え~~~~~~~~~~ッ(ム~~~~~~~~ッ)」 (マ)「上条、何とかしろ」 (上)「な、何とかしろって言ったって……」 (マ)「しょうがねえなぁ……ホラよッ」 『キュンッ』 マスターがチョットだけ勢いづけてハンドルを切る。 シートベルトをしている最中の上条が横Gに押されて美琴の方に流れる。 (上)「わッ!? わわわわわ……」 (琴)「キャッ!?」 『チュッ』 (マ)「しばらく大人しくしてろよ。二人とも」 (上琴)「「ふ、ふにゃぁぁ……」」 深夜の第七学区を駆け抜ける『ドラゴンドライブ』 その後部座席からは、ピンク色のハートが夜空に舞っていたとか、いなかったとか……。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/938.html
以下、作者による注 41 :1 [sage]:2011/03/05(土) 22 13 59.48 ID VPiHbgWD0 すいませんすいません この方たちすっかり抜けてました ===英国王室=== エリザード 【捕縛】 リメエア 【捕縛】 キャーリサ 【捕縛】 ヴィリアン 【捕縛】 ===騎士派=== 騎士団長 【捕縛】 あと吹寄【行方不明】 最初からこんな調子だと誰か見捨ててしまいそう… 御坂妹を病院に預け、上条は出発することにした。 カエル顔の医者を見つけ、御坂妹をネットワークに繋げるようにしてもらう。 そうすれば彼女の問題は解決だ。 「先生を探しに行くのですか?」 少女はどこか寂しげに話しかけてきた。 「それならミサカも一緒に……」 「それはやめてくれ。途中ではぐれたらもう見つけられないかもしれないだろ」 「それはそうですが、でも……」 道端で出会ってから病院に来るまでの間しか上条とは一緒に過ごしていない。 彼女としては、もう少しイベント的なものがあってもいいのではないかと期待しているのだが、 想いを寄せる相手が朴念仁なのだから、そういった受け身の姿勢では得るものがない。 というわけで御坂妹は、 「お前が無事なのが一番助かるし、俺も嬉しいんだから」 この一言で妥協することにした。 「……いってらっしゃい。必ず無事に帰ってきてくださいね、とミサカは送り出します」 病院を出ると、妹達が離れたのを見計らったのか、スフィンクスが寄って来た。 「にゃー」 「お前、今日はやけに絡んでくるな?」 ちくわも持ってないのに。 「……もしかしてウニ狙い?」 「……」ダッ ちょっと勇気を出して披露したギャグは冷たくスル―された。 スフィンクスは遠くへ駆け出していく。 「ちょ、逃げるほど寒かったか!? 俺のこのツンツンヘアーと海の幸を掛けたクスリとくるネタが……」 追いかけると、スフィンクスは曲がり角の前で立ち止まり、上条の方を振り向いた。 そして一言。 「にゃー」 「何だよ? 今度は曲がれってか?」 近寄ってみると、そこは細い路地だった。 ビルとビルの隙間の薄暗い空間。少し先は行き止まりになっている。 「何か出そうで不気味なんだけど……」 スフィンクスは構わず進んでいく。 仕方なく上条が付いていくと、大きなエアコンの室外機の陰に、何か動くものがうずくまっている。 背筋がぞわりと疼いた。 「う……うう……」 女の呻き声が聞こえる。 「な、何だ……?」 「うー…………うぅ~……」 ――聞こえるんですよ、うー、うー、って。うすぐらーい中で。 いやあ、驚きましたねえ。気味のわるー……い女の声でしたよ。 私も、やだなー、やだなーって思ったんですけどね 怖かったですけどもねえ、そー…っと近寄ってみたんですよ。 そうしたら―― 「――吹寄?」 「かっ……上条当麻……?」 吹寄制理だった。 「おい!? だ、大丈夫かよ? 何でこんな所に……」 「へ、平気よ。ちょっと休んだらすぐ行こうと思ってたんだから……」 「大丈夫そうには見えねえよ! 一体何があったんだよ、こんな見つかりにくい所で」 「人に迷惑は掛けられないから、目立たない場所を選んだのよ」 駆け寄った上条が支えてやると、吹寄はゆっくりと起き上った。 座った状態でもふらふらなのが分かる程で、とても元気そうには見えない。 無理に歩かせたらまた倒れるのではないかと心配になるくらいだ。 「何だよ、熱でも出したのか?」 「違うわよ。大丈夫だからほっといて!」 「放っておけるかよ、こんな状態のクラスメイトを!」 「大したことじゃないの。ただ……」 「ただ?」 「…………たのよ」 「ん?」 吹寄が、小さな声で何か呟いた。 怒ったように顔を赤くしている。というよりも明らかに不機嫌である。 「お腹が空いて動けなくなっちゃったのよ!!」 「ええー!! そんなベタなー!!」 「悪かったわねベタで!!」 「デコッ!?」 上条は頭突きを食らってしばらくダウンした。 「それなら僕の顔をお食べよ」カポッ というわけにもいかないので、 上条は動けない吹寄のためにコンビニでパンと牛乳を買って来てやった。 受け取った吹寄は何の付随効果も無いカレーパンに少し顔をしかめたが、 空腹の方が勝ったのだろう、何も言わず食べ始めた。 スフィンクスが物欲しそうに眺めていたが、非情にも彼女は無視した。 「で、何でお前はそんなになるまで何も食わなかったの? もしかしてダイエット?」 「もが、べひゅに私は、むぐ、細くなるとか可愛くなるとか、むぐむぐ、興味ないし」 「だったら何で?」 「むぐっ…………」 吹寄はまた顔を赤くして押し黙った。 「あの……お金が、ないの」 「ははあ……」 一人暮らしは毎月末にピンチになるのが常識である。 吹寄制理にもその常識が通用してしまったらしい。 「お前って結構しっかりしてるように見えるけど、そういうとこはルーズなのか」 「い、一応きちんと家計簿は付けているのよ? 今月はちょっと無理な買い物しちゃって」 「……いくらの健康グッズを買ったのかな?」 「うぐぐ……」 ムサシノ牛乳ではない牛乳に顔をしかめつつ一気に飲み干すと、 吹寄制理は勢いよく立ちあがった。 スフィンクスが舌打ちをした。 「とにかく私はこんなところでのんびりやってる暇はないの! 小萌先生を見つけたのよ! 声を掛けようと思ったけど見失っちゃって。 場所を警備員に伝えて捜索に協力してもらおうと思ってたの」 「先生を? どこで?」 「第六学区よ。小さな女の子を連れていたわ」 「そりゃ危ねえな。幼女の姉妹が歩いてるようにしか見えないもんな」 月詠小萌はれっきとした高校教師であるが、見た目は12歳という驚異的な若々しさの持ち主である。 そんな女性が小さな女の子を連れているということはつまり、少女を狙った犯罪者の恰好の餌食だ。 「それじゃ、警備員の詰所へ行くわよ!」 「う、え、俺も?」 「担任の先生が誘拐されそうになってるというのに、放っておくの? 貴様は!」 「め、め、めっそうもありません」 本当はカエル顔の医者を見つけて御坂妹を助けてやらなければならないのだが…… 押しに弱い上条だった。 「にゃー」 警備員の詰所には、黄泉川愛歩がいた。 「いるしッ!!」 「んー? あ、小萌センセんとこの問題児じゃん。どうした?」 「どうしたも何も、先生がいきなり行方不明になったって、結構騒ぎになってますよ!」 「あら、そうなの?」 吹寄は月詠と姫神と青髪ピアスが行方不明になったことまでしか知らない。 黄泉川まで消息が分からなくなっていたと聞かされてきょとんとしている。 「色々起こってるのね」 「そのせいで上条さんはてんてこまいですよ……」 「? なぜ貴様がてんてこまいになるの?」 そういえば、何でだろう。 自問に自答する前に、黄泉川が頭を掻きながら謝罪してきた。 「あー、悪い悪い。ちょっとドタバタしてただけで、 うっかり学校に午後の欠勤届出すの忘れてたじゃんよ」 「ドタバタって?」 「学校で色々行方不明になってるのは知ってるじゃん? それの捜査をしてる時に遊園地で人質を取った男が立てこもり事件を起こしたって通報が来たじゃん」 「ええっ! 立てこもり? 遊園地で?」 「そ。一度にあれこれ起きててんやわんやじゃん」 ということは、警備員は今とても忙しい。 しかし遠慮していても仕方がない。 吹寄は進み出ると、月詠を第六学区で見かけた旨を報告した。 「お。ってことは小萌センセは無事かな? 報告助かるじゃん。 連絡がないのは気になるけど、事件性はなさそうだから取りあえず後回しにするじゃん」 「はい……まあ、仕方ないか」 吹寄は肩をすくめてため息をついた。ぷるん。 「用事はそれだけ? じゃあ悪いけど、お茶を出してのんびりお喋りってわけにもいかないから、 とっとと家に帰るじゃん」 黄泉川に促され、2人は詰所から追い出される。 「じゃ、先生、さようなら」 「おう。さよーならー」 吹寄は帰って行った。 これだけのためにひどい目に遭ったね。 「……と、そうだ。先生、ついでに聞いておきたいんだけど」 一緒に出て行こうとした上条だったが、ふと気が付いて黄泉川を振り返る。 「うん?」 「打ち止めとか、この、芳川? とか…… 先生の同居人が先生を探しに出掛けたらしいんだけど、会ってねえかな」 「うーん、会ってないじゃん。ちょっと連絡とって見るよ」 芳川は携帯電話を取り出し、打ち止めの番号へ電話を掛けた。 電子音が響く。 彼女は応答するだろうか。 『もしもしヨミカワーっ? 今ツクヨミと一緒に第六学区の遊園地にいるのってミサカはミサカは現状報告!』 「「」」 ■■■■救助リスト(抜粋)■■■■ ===学園都市=== とある高校 月詠小萌 【第六学区の遊園地】 結標淡希 【行方不明】 姫神愛沙 【行方不明】 吹寄制理 【解決済】 青髪ピアス 【行方不明】 土御門元春 【拉致:謎のキャンピングカー】 黄泉川家 黄泉川愛歩 【解決済】 芳川桔梗 【行方不明】 一方通行 【行方不明】 打ち止め 【第六学区の遊園地】 番外個体 【行方不明】
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2486.html
我が家に妹がやってきた 1 0日目あるいは序章 学園都市の空の玄関口である第23学区の隅にあるマンションの一室では、4人の男女による熱い議論が繰り広げられていた。「暗部の仕事に拒否権はないのよ。それは貴方が一番良く知ってるでしょ、一方通行」 赤毛をツインテールにまとめブレザーをマントのように羽織った少女が、真っ白な髪の毛に煌々と輝く赤い瞳を持つ少年・一方通行に問いかける。「ンなことなんざァ、百も承知なンだがよォ」「やはり貴方としては打ち止めを置いて海外へ出ることはしたくない……というわけですね」 一方通行の言葉を補足するように隣にいた爽やかな青年が、自身の想い人の幼い頃にそっくりな少女を思い出しながら問題点を明らかにする。「黄泉川は学校の出張で1週間ほど学園都市の外、あのニート独りでは生活は厳しいンだよォ」 一方通行はじゃんじゃん爆乳教師と元研究者現ニートの保護者二人組の顔を忌々しそうに思い出す。「となると、打ち止めは誰かに預けるしかないってことになるわね」「ですが、それは一方通行が納得しませんね」 赤毛の少女――結標淡希と爽やか青年――海原光貴は、この重度な過保護である意味子煩悩とも言える一方通行の性格をよく理解していた。「連れて行くっつゥ選択肢はねェからな」「わかっていますよ」 今回の任務は海外における大規模な掃討作戦である。『グループ』の主力で学園都市第1位の超能力者である一方通行の力は必要不可欠であった。「なぁ、一方通行」「なンだよ、土御門ォ」 今まで議論を黙って聞いていた金髪グラサンアロハシャツの男――土御門元春がゆっくりと顔を上げる。「お前の言い分はこうだ。任務に打ち止めは連れていけない。保護者がいないから学園都市に置いておくこともできない。だから任務に行くのをためらっている」「要約するとそォいうことになンなァ」「だったら、お前が信頼出来る奴に打ち止めを預ければいい」 土御門の提案に一方通行は露骨に不快だと表情を歪める。「一方通行にその条件を満たす人物はいないと思いますが?」 そうこの問題は一方通行が信頼して打ち止めを預けることができる人物がいないからこそ起きているのだ。海原は土御門の言葉に疑問で返す。「確かに、一方通行の知人でその条件を満たす人物はいない」 あんまり友達いないしにゃーとからかう土御門に、一方通行は青筋を浮かべ、歪みに歪みきった笑みさえ浮かび始める。「だが、その条件に当てはまる人物をオレは知ってる」「どこのどいつなンだよォ、ソイツはァ! もしくっだンねェ奴だったらテメェは血祭りだからなァ!」 本格的にキレそうな一方通行の姿に結標はまた始まったよとでも言わんばかりに肩をすくめる。「オレは一方通行がいない学園都市で、最も打ち止めの面倒を見るにふさわしい人物だと思うがな」「なるほど、自分にはそれが誰か予想がつきましたよ。確かに彼女なら適任だ」 土御門の言葉に海原は人好きのする笑みを浮かべて自身の想い人のことを考える。「ここまで言ってわからないの?」 結標も予想が付いたらしく、まぁそれならいいんじゃないと言わんばかりだ。「で誰だ」「打ち止めのオリジナル――『超電磁砲』だ」 海外へ出発する前日、一方通行のテンションは果てしなく低かった。打ち止めにしばらく会えなくなることもそうだが、土御門がサングラス越しにニヤニヤしながら語ったプランとやらがどうにも引っかかったからだ。 とはいえ、グループはそれぞれの護りたいもののために力を使うことを誓った組織だ。土御門もそういう人物だし、打ち止めに危険が及ぶことはないと断言してもいい。ただ何かを企んでいる……そんな気はする。 とはいえ、一方通行に選択肢はない。個人的にいけ好かない超電磁砲ではあるが、『妹達』のオリジナルである彼女が打ち止めの面倒を見ないことはないだろう。それに家族を心のどこかで求める一方通行だからこそ、実の姉といってもいいオリジナルと打ち止めに姉妹として生活するという経験があってもいいのではないかと考えたのだ。 黄泉川のマンションにいつの間にか辿り着く。杖をカツカツと鳴らしながら、扉まで近づくといきなり小さな影が一方通行に飛びついてくる。「おっかえりーってミサカはミサカはあなたに抱きついてみる」 チッと軽く舌打ちを打つ一方通行だが、その表情は満更そうでもなく、抱きついてきた打ち止めを離して、ポンと頭に手を置く。「黄泉川のやつはどうしてる?」「明日の準備をしてるよってミサカはミサカは暗に誰も相手をしてくれなくて寂しいって伝えてみる」「そォか」 打ち止めを連れ立って慣れ親しんだリビングへと向かう。コンビニで買ってきた打ち止めの好きな駄菓子を与え、一方通行はソファーに座るように促す。「そういえば明日から海外に行くんだよねってミサカはミサカは一緒にいきたかったなと心の中を語ってみたり」 駄菓子を開封することなく打ち止めは少し寂しそうに一方通行を見上げる。「そのことについてなンだが、打ち止め。明日からおまえ、オリジナルンとこへ行け」「え、お姉様のところ?」「あァ」 一方通行の予期せぬ言葉に思わず言葉を失っていた打ち止めだったが、彼の言葉を理解するとぱぁっと先程までと打って変わって表情が明るくなる。「イェーイってミサカはミサカは予期せぬサプライズで戸惑いつつもお姉様と遊べることに喜びを爆発させてみたり」 打ち止めは学園都市に住む他の妹達に比べてオリジナルと接する機会が少ない。だから彼女と接することができるのが嬉しいのだろう。 そんな打ち止めの様子を眺める一方通行の心境は嬉しくもあり寂しくもあり複雑なものだった。 だが、打ち止めを護るならこれが一番いいのだと割り切り、一方通行は良かったなと言わんばかりに優しく打ち止めの頭を撫でる。「でもあなたと会えないのは寂しいなってミサカはミサカはしょげてるアクセラレータに早く帰ってきてねと暗に伝えてみる」「クソッタレな仕事なんざさっさと終わらせてやンよ」
https://w.atwiki.jp/meteor089/pages/262.html
ボーイ・ミーツ・トンデモ発射場ガール Intersection of the three stories 繋がる人と人 前へ 戻る 次へ [19764] Intersection of the three stories 繋がる人と人 Name nubewo◆7cd982ae ID f1514200 Date 2011/06/22 02 07 コンコンというノックの音で、まどろんでいた春上の意識は覚醒した。 「おはよう、春上さん。朝早くにごめんなさいね」 「あ……おはようございます、なの」 病院が本格的に活動する前からパリッと紺のスーツを着こなしたテレスティーナが、にこりと春上に微笑みかけた。 それに少し恥ずかしくなりながらお辞儀を返す。 一応、もう起きていないといけない時間だった。 「体の調子はどう?」 「大丈夫なの。普段は、なんともないから」 「そう、よかったわ。実は朝からちょっと検査をしようと思っていたの。食事前でないと困るから、起きてすぐで申し訳ないけど、準備してくれるかしら」 「わかったの」 ベッドから降りてスリッパを履き、ざっと髪を整える春上を笑顔で眺めながら、テレスティーナがカーテンを開くスイッチを押した。 夏の嫌になるような強い太陽が、燦燦と外の世界を照らしていた。 「いい天気ね」 朝から仕事で疲れるのよね、なんて感じにテレスティーナが伸びをする。 その隣で細々としたことを済ませ春上がテレスティーナのほうを向いた。 「お待たせしましたの」 「ううん。大丈夫よ。さ、それじゃ行きましょうか。今日はいいものも見せてあげられるわ」 「いいもの?」 「ええ」 テレスティーナは多くを語らず、いつもと違う方向へ春上を案内した。 そしてある一室の扉を開ける。 「ここがそうよ」 「ここ……?」 「うん。ポルターガイスト事件の核になっている子供達を保護することが出来たの。あなたのお友達も、いるんじゃないかしら」 「えっ?!」 絆理ちゃんが、ここにいる? ずっとずっと会いたかった、春上の親友。 待ってるじゃ会えそうにもなくて、退院したら、初春に助けてもらって絶対に見つけようと思っていた。 その、枝先がこの部屋にいるとテレスティーナは言う。 10床以上ベッドが並び、各々が衝立で仕切られているから、何処に誰がいるかが分からない。 ふらふらと春上は歩きだし、ベッドを一つ一つ調べ、テレスティーナの言を確かめていく。 「あ……!」 こげ茶の髪、そばかすの浮いた頬。 手足がガリガリとやせ細って見ると苦しくなるけれど、その顔を、春上は間違えたりなんてしない。 「絆理ちゃん! 本当に……絆理ちゃんだ!」 痛ましい。 どうして、こんな風になっているのだろう。 そう思いながら、春上は枝先のこの姿を、どこか驚きなく見つめていた。 あれほど、悲痛な声で自分に呼びかけをしていた枝先のテレパシーを思い出すと、むしろ納得すらしてしまえそうだったから。 シーツの横から手を差し入れて、そっと枝先の手を握る。ほっと春上は息をついた。普通に、人の温かみを持っていた。 「あ! そうだ、初春さん連絡してあげなきゃ!」 「ごめんなさい春上さん。検査の装置、使う予定がつまってるからすぐ測らせて欲しいの。春上さんの検査で、この子達を助ける方法が分かるかもしれないから」 申し訳なさそうなテレスティーナの声に、春上はハッとなった。 検査の後でも、初春さんには連絡できるよね。 それより、一秒でも早く、絆理ちゃんたちを助けてあげなきゃ。 「ごめんなさいなの。すぐ、行くの」 「うん、頑張りましょうね」 慌てるように春上は部屋の外へと向かった。 その後姿をテレスティーナが微笑みながら見つめた。 ――ニィ、と犬歯をむき出しにして。 近くの検査室では、全身麻酔の準備が整っていた。 朝の病院を、黄泉川はカツカツと進む。 服装はいつもの緑のジャージではなく、警備員のジャケットに身を包んでいた。 もちろんこの格好の教師が山ほど街中を歩いているから、これで威圧感を覚える人間などいないだろう。 だが、立場をはっきりさせる意味で、黄泉川はこれを着ていた。 「朝から精が出ますわね」 「ああ、アンタを探してたんだ。おはようございます、テレスティーナさん」 「おはようございます、黄泉川先生」 アッサリとした薄い笑顔の黄泉川と、いつもどおりの優しい笑顔をしたテレスティーナ。 黄泉川はテレスティーナの笑顔の作為感に改めて違和感を覚え、テレスティーナは黄泉川の教師ではなく警備員としての笑顔に警戒感を抱いていた。 「ちょっと仕事が朝から立て込んでてね。ところで、春上の見舞いに行こうとしたら止められたじゃんよ」 「ああ、春上さんは午前一杯は検査になりますわ」 「検査? 春上自身にはほとんど問題なくて、原因はポルターガイストの引き金になる子供達だろう? 何で今更、春上の検査を?」 「事情が変わったんですよ。正式には午後にも警備員のほうへ連絡を入れるつもりだったんですけれど。――――木山春生が匿っていた懸案の子供達の身柄を保護しました」 微笑を消して、テレスティーナが重要な事実を告げた。 黄泉川も営業用の軽めの笑みを消して、テレスティーナの続きを促した。 「彼らの覚醒を手助けする上で春上さんの検査を行うことは有意義と判断した次第です」 「……そうか。まあ、医者がそう言うんなら、あたしには反論はないじゃんよ」 「ご理解頂けて助かりますわ。ところで、その子達を見ていかれます?」 「ああ。頼む」 「わかりました」 テレスティーナが、病院の奥、搬入口に程近いほうに黄泉川を案内した。 その道すがらに、黄泉川は何気ない口調で軽く訪ねた。 「そう言えばテレスティーナさん」 「はい?」 「ここって体晶のサンプルを扱ってるのか?」 黄泉川は、僅かにテレスティーナから遅れるように歩いているので、声は肩越しに届いた。 テレスティーナは、ピクン、と肩を揺らした。 足捌きは、澱みながらも止まりはしなかった。 「体晶のことは知っているんだな」 「黄泉川先生。その単語には、さすがにびっくりしてしまいますわ。……知っています。研究テーマが近かったこともあって、その悪魔の薬のことは聞き及んでいましたから」 「ふうん。で、ここにサンプルはあるじゃんよ?」 「いいえ。正式な令状でもお持ちなら、捜索なさってください。疑われるのは心外ですけれど、身の潔白を証明することにやぶさかではありませんから」 黄泉川は優しげなテレスティーナの微笑みの裏に、僅かに優越感を感じた。 きっと、本当にないのだろう。 「それにしても、急に能力体結晶の話なんて。黄泉川先生、どうしたんですか?」 「ん、昨日上条が……ああ、入院していた婚后の彼氏であたしの学校の生徒だ。そいつがテレスティーナさんが大学生くらいの女と体晶の話をしていたって言ってな。聞き間違いかもしれないが、無視するには重い情報だろ?」 黄泉川は包み隠さず、そう話した。 一瞬テレスティーナが見せた苛立ちの瞳の中に、冷酷なものが混じったのを黄泉川は感じた。 「体晶は学園都市の生んだ狂気の結晶ですから、確かに危険ですけれど。そんなものがここにあると疑われるのは残念です。たぶんそれは、とある能力者の方と能力開発に使う薬品の話をしていただけですよ」 「そうか。悪かった。変に疑って。それと婚后が朝からここを抜け出しているだろう。たぶんもうじき別の医師の診断書を持ってここに来ると思う。テレスティーナさんには不愉快なことだと思うが、一週間拘束されて婚后も相当カンカンだったらしい。出て行くって聞かなかったじゃんよ」 「ああ、そういうことでしたの。主治医が困っていたから何かと思ったんですけど。黄泉川先生の指示でそうされたわけではないんですね。まあ、一週間もいれば我侭になるのかもしれません」 光子は確かに黄泉川の指示で動いたのだが、しれっと黄泉川はそれを誤魔化した。 黄泉川はもう、別のことを考えていた。 テレスティーナは、放置するにはあやしすぎる。 昏睡状態にある子供達も、ここにいて安全かどうか分からない。 警備員として最短で行動を起こす方策を考えながら、黄泉川はベッドに横たわる子供達を眺めた。 いつかの、自分の過去を思い出して、平静でいることは大変だった。 朝、さまざまな商業施設などが門戸を開く時刻。 「……ええ、分かりました。では制服と下着の替えを預けておきましたから、お姉さまも体をお休めになったら合流なさってくださいませ」 白井は昨日から帰宅しなかった美琴にようやく連絡を取れていた。 あのバカと遊んでた、なんていう言い訳に大きくため息をついて、白井は私服では寮の部屋に戻れそうにない美琴のために、駅前のホテルのクロークに美琴の着替えを預けたのだった。 「御坂さん、なんて?」 「どうもこうもありませんわ。また、あのバカさんと遊んでいたのだとか」 「夜通しって、それってやっぱり、そういうことなんですかね?」 佐天がどこかぎごちない笑みでそんな茶々を入れた。 普段ならいくらでも佐天と初春は盛り上がるネタだろう。 だけどなんだか考え込んだ風の初春と、場をはぐらかそうとして滑ったような佐天の二人の様子はいつもらしくなかった。 今、白井は初春、佐天と共にとある病院の前にいる。 木山春生がポルターガイストの原因となっている子供たちを匿い、そしてつい昨日、初春と佐天の目の前でテレスティーナにその子たちを「保護」された病院だった。 「まあ、お姉さまのことはよろしいですわ。それより、木山春生のことです」 「……うん」 「昨日の夜、テレスティーナさんが昏睡中の子達を保護してから、木山はどうしましたの?」 「別に、何かしたとかはなくて……呆然、って感じでした」 なんとなく、初春は木山に共感できるようなものを感じていた。 きっと、木山は学園都市を敵に回したって、その子達だけは絶対に助ける気だったのだと思う。 だからテレスティーナのやったことは、正しいのかもしれないけれど、母親から子供を取り上げるようなことみたいだった。 木山の喪失感で埋め尽くされた顔が、見ていられなかった。 立ち尽くす木山を励ますことも出来なくて、カエル顔の医者の采配で佐天と初春はタクシーで自宅に帰されたのだった。 「木山先生、まだいるでしょうか」 「……帰る場所はあるんだし、そっちかもしれないけど」 昨日の夜、暗くなってから訪れたのとでは印象が違う病院の入り口をくぐる。 ぽつりぽつりと診療に来た人たちはいるものの、片手で数えられる位だった。 そして広い待合室の奥隅に、カップのコーヒーを持ったまま、うなだれている長髪の女性の姿があった。 無造作な髪と、いつにも増して濃い目の下の隈。 木山春生その人だった。 「木山先生」 「……君達か」 ちらりとこちらを一瞥して一言呟くと、木山は再び地面を見つめ、佐天と初春、白井に取り合わなかった。 「あの、昨日は……ごめんなさい」 「謝るのはよしてくれないか。君たちが悪いわけでは、ないのだろう?」 迷惑だという響きをはっきり込めて木山はそう初春に返した。 実際、謝罪をすべきことはなかった。 犯罪を犯して保釈中の木山の手元から、昏睡中の子供達の身柄を保護し、しかるべきところに移す。 初春たちはその出来事に、間接的に関わっただけだった。 だけど、目の前の木山は失意の泥に沈んでいて、痛ましい。 「それで、何をしに来たんだ」 「その、木山先生はどうしているかなって……」 「見てのとおりだよ」 自嘲を頬に浮かべて、木山は氷も溶けてぬるくなったコーヒーの残りを飲み干した。 味が薄くなってひどく不味い。 「昨日の夜から、何もすることがなくなってしまってね。ずっと後ろ向きなことを考えていたよ。もう少しだったのに、なんて思い出すときりがなくてね」 「木山先生……」 木山は、初春たちに恨み言を言うことはなかった。 だが本当に恨みがない、ということはないと思う。 その態度は、初春の勘違いかもしれないが、間違ったことをしていない学生を叱ることはしないという、ごく教師らしい考えを木山が守っていることのように思えた。 だってこの人は、研究にしか興味がないような態度でいながら、とても生徒のことを愛せる人だから。 教師だからといって誰にでもできることではない。 だけど、だからなおさら、昨日木山から子供達を取り上げてしまった自分達の行いが、正しかったと胸を張れない。 かける言葉を失った初春の代わりに、白井と初春の後ろにいた佐天が木山に歩み寄った。 「あの……木山先生って呼んでいいですか」 「昨日も言ったが、君は私を恨む資格がある。なにも敬称をつける必要などないよ」 「いいんです。初春もそう呼んでるし、木山先生は、先生って呼ぼうって思える人ですから」 「そうかな……そう言われるとむしろ居心地の悪さを感じるよ。私は学生の敵だからな」 親身に関わった13人の小学生を昏睡に陥れ、後に自らの作ったプログラムで一万人の学生を意識不明に陥らせた女。 たしかに学生達にとって悪魔と言える実績だった。 でも、やっぱり佐天には恨めないのだった。 初春が木山に感情移入しているせいもあるかもしれない。 「先生はこれから、どうするんですか?」 「どう、というのは?」 「あの子たちをテレスティーナさんが助けるまで、何もしないで待っているんですか?」 「……彼女には救う手立てがあるのだろう。前科持ちの私の協力なんて、向こうが願い下げだろう」 「信用されないかもしれないですよね、確かに。でも」 木山は見上げた佐天の瞳に、強くこちらに問いかけるものがあるのに気がついた。 気丈に自分の目の前に立つその女の子は、一時は幻想御手で意識不明になったことがある。 何を言われるのか、木山には見当がつかなかった。 「先生はあんなズルをしても、叶えたい思いがあったんですよね。だったら、ズルがばれて信用されなくなったって、もっと足掻かなきゃいけないと、思います。じゃないと、あんな目にあった私達が、浮かばれないです。……ズルをしたら、絶対にしっぺがえしがあるんです。それはきっと当たり前のことなんです。でも、だからって生きていくことを止められるわけじゃないですよね」 幻想御手を使ってあの子たちを助けるという手を、佐天はさすがに認められはしない。 だけど、やってしまったのなら、後には引かず、信用されずともあの子たちのために最善を尽くすことだけは、止めてはいけない。 佐天は自分にも、同じ事を言い聞かせる。 幻想御手を使ってでも能力を伸ばしたいと思ったなら、それが失敗に終わっても能力と向き合うことを止めてはいけない。 ……それがきっかけで、幸運にも自分は大きく能力を花開かせられたのだ。 「あの女に、協力しろと君は言うんだな」 「それが、一番あの子たちのためになる道じゃありませんか?」 「……そうだな。取り戻すのは、もう無理だろうから」 木山は内心にくすぶる、理論的でない憎悪を噛み殺す。 テレスティーナは職務を遂行しただけだ。 決して、自分からあの子達を面白半分に奪ったのではないのだ。 「体晶のサンプルがあれば、ワクチンが作れるところまでプランは構築してあったんだ。引き継いでもらえるとも限らないが、やれることをやる義務が、私にはあるんだったな」 初春が潤ませた瞳で、立ち上がった木山を見つめた。 白井は二人と木山の表情を見て、そっと笑みを浮かべた。 カギを開けて、美琴はホテルの一室に崩れ落ちる。 昨日の夜からさっきにかけて、随分とめまぐるしく自分を取り巻く世界は変わっていた。 酷使した体は休息を欲していて、このままベッドに身を預けてしまいたい。 ……それにも、罪悪感を覚えるのだった。 心の均衡を失った人は、まず、眠れなくなるものだ。 だが美琴は、あの廃車場から離れて駅前でうずくまっているときにもうつらうつらと意識を手放したし、きっと今も、目を瞑れば眠れるだろう。 自分は、これだけの目にあって、まだ眠気を覚えるくらいに不貞不貞しい。 眠れないほどに苦しんで当然なのに。 「シャワー、浴びなきゃ」 玄関でだらしなく座り込んだ体を起こすでもなく、だらだらと這ってユニットバスへ向かう。 服は全て捨てるつもりだった。 酷い汚れがこびりついているし、何より、今日に繋がる思い出なんて、何一つほしくない。 キャップを外し、髪を括ったゴムを外す。 それを、躊躇い無くゴミ箱に突っ込んだ。 靴下とシャツを脱ぎ、短パンと合わせてこれもゴミ箱へ。 下着を脱ぐ。 ゴミ箱の中からシャツを取り出して、シャツに下着を包んでこれもゴミ箱へ。 まだ着られる服を捨てる後ろめたさが、また美琴に引っかかる。 後ろ向きな時は、どこまで行っても後ろ向きな考えが出てくるのだった。 「木山のところ、か」 合流地点は白井に連絡を貰っていた。 もちろん、無理なら来なくていいとは言っていた。 その言葉に甘えてしまおうかとも思う。 だって、もう、何もかもがどうでもいい。 浴室に入って、シャワーのコックを捻る。 夏場のことだからぬるめのお湯なら温度なんて適当でよかったから、湯加減なんてほとんど見ずに美琴は頭から水に近いお湯をかぶった。 皮脂と埃で濡れにくくなった髪がシャワーのお湯を素通りで下に垂らしていく。 汚れた髪は、指で梳きながら濡らさないといけなかった。 「気持ち悪い……ホント、最悪」 しばらくばしゃばしゃとやって体全体を濡らして、ようやく汚れが落ちていくような気になる。 小さなパックに詰められたシャンプーを取り出して、髪につけた。 泡立ちの悪さに苛立ちながら、ふと隣の姿見を見る。 ――昨晩、死んだあの子たちと同じ顔だった。 将来に希望なんて感じさせない、無表情。 生気の無さで言えばいまの美琴のほうが酷い。 生まれてから、あの子たちは何度髪を洗うのだろう。 自分が今使っているシャンプーは、値段はそれなりに張るもののはずだ。 そういう女の子らしいおしゃれを、あの子たちはするのだろうか。 女は女に生まれるのではない、生まれてから女になるのだ。 ――――偉い人はそう言った。 なら、妹達は女ではないらしい。 それに妹達がおしゃれをするとして、それに意味はあるだろうか。 意味があるかを決めるのは誰だろうか。 道具は、作られる前から作られる目的があらかじめ決まっている。 人間は、作られてから後に、自分が何者であるのかを決めていく。 妹達は、どちらだろうか。 シャワーで、シャンプーを洗い流す。 それでようやく、人心地ついた気がした。 トリートメントで髪を整えて、続いてスポンジにリキッドソープをつけて泡立てる。 昨日、美琴の体にこびりついた何もかもをそれで剥がしとっていく。 その間にふと思い出した。 靴を、まだ捨てていなかった。 「靴……も捨てればいいか」 お気に入りのスニーカーだったが、妹の血がついていた。 洗っても染みは消えないだろう。 ……妹の血を汚らしいものと考えている自分に嫌気が差す。 だけど、やっぱりあのスニーカーをもう一度履くのは嫌だった。 「私のこと、恨めばいいのに」 だが妹達に、そんな素振りはない。 それがむしろ重荷だった。 美琴がこれからしなければいけないことは決まっている。 無駄かどうかなんて、やってみないとわからない。 無駄でも、やらないといけない。 でも、あの実験を止めるなんて大きなこと、出来る自信がない。 そう思ってしまう。 頭から、美琴はシャワーをかぶった。 起伏に薄いその体からさらさらと泡が流れ落ちていく。 助けて欲しかった。 話を聞いてくれるだけで、いい。 一番に浮かんだのは、母親だった。 でも言えるわけがない。 すごく可愛がってもらった。 今だっていつも気にかけてもらっている。 そんな人がお腹を痛めて生んだ自分と同じ顔の子たちが、毎日ラットみたいにダース単位で死んでいるなんて。 両親には、言えなかった。 そして自分を頼ってくれる、かわいい後輩や友人達にも。 学園都市第三位が何も出来ない状態で、何を話せというのだ。 両親がだめで、頼ってくれる後輩もだめ。 そう考えれば、話せる相手は一人だけだった。 美琴は昨日の夜から朝までずっと、その人の顔を思い出しては、期待しては駄目だと言い聞かせていた。 来てくれるはずがないから。 迷惑だから。 嫌われるかもしれないから。 ……だけど現実はもっと美琴に冷淡だった。 確かに当麻は、美琴の前に来た。 一番来て欲しいときに来てくれた。 ただし、彼女を連れて。 嫉妬だったのだろう。 あれほど、明確な敵意を光子から向けられたことなんて、無かった。 それで、美琴は頼れるかもしれなかった最後の人を、失った。 「っ……」 シャワーを頭から浴びる。 汚れた体は思考を鈍化させていた。 それを洗い流すと、峻烈な後悔と悲恋の味が心に出来た傷に染みた。 泣くのも許さることじゃないと、美琴は思う。 だから、必死に嗚咽を隠した。 シャワーの音が煩いのが幸いだった。 しばらくの間、じっとうつむいた後、美琴はキュッとコックを捻った。 体を拭き、浴室から出る。 ざっと髪を乾かして、下着を身につけた。 そしてバスローブを羽織って、美琴はベッドでシーツにくるまった。 当麻は、自分のことを恋人としては見てくれない。 そう分かっていたのに、美琴の心を支えてくれるのは、光子が現れる前にかけてくれた当麻の言葉だった。 それしか、無かった。 それを反芻しながら、美琴は1時間、意識を手放した。 駅前にたどり着いて、インデックスは辺りを見回した。 目の前のエスカレータを上った先に改札があって、奥のプラットフォームから出る電車に乗れば、ほどなくエリスのいる、インデックスが通う予定の神学校へとたどり着ける。 「うー……暑いんだよ。東洋の夏はどうしてこうジメジメするのかな」 当麻が歩く結界の機能を完膚なきまでに破壊してくれたおかげで、この豪奢な修道服は夏場の日本で着るには少々厳しかった。 とはいえそれくらいで元放浪少女の健脚がへこたれるはずもなく、記憶のとおりにインデックスは目的地を目指す。 「おー、誰かと思ったら、懐かしい顔が見えるにゃー」 「え?」 その声が誰なのか、一瞬インデックスは分からなかった。 忘れたからではない。 いるはずのない知り合いの声だったから。 警戒しながら横に振り向くと、金髪にサングラスをかけた、いかにもチャラい男子高校生がいた。 上半身はボタンを留めずにアロハを羽織っていて、痩せぎすでいながら無駄のない筋肉をさらしている。 胸からは二つほど金色のネックレスを下げていて、まあ、お世辞にもかっこいいとはインデックスは思わなかった。 昔とはあちこち雰囲気が違うけれど、その軽薄さだけは変わらない、土御門元春がそこにいた。 「どうしてあなたがここにいるの?!」 「いやー、色々と最大主教 アークビショップ の人使いが荒くてにゃー、こんな敵地もいいトコに単身赴任だぜい」 どんな重要な話をしているときでも、はぐらかす気なら土御門はこんな態度を取る男だ。 学園都市に何をしに来たのか、それを探るのは難しい相手だった。 ただ。 「単身赴任っていうのは嘘だよね。妹がいるんでしょ?」 「んー? 妹カフェは嫌いじゃないけど特定の子と仲良くなるには出費がきつくて難しいにゃー」 「はぐらかしても無駄だよ。舞夏もこの学区にいるんだし」 「――知ってるのか」 その声の響きにインデックスは本音の匂いを嗅ぎ取った。 舞夏のことを、インデックスには知られたくないような、 いや、「そっち側」の人間を忌避する響きだったように感じた。 「舞夏はとうまと一緒に行った学校で会った」 「ああ、常盤台でか。まさか面識ができているとはにゃー。保護者の二人はどうしてる?」 「べつにあなたに言う必要なんてないけど?」 「おいおい、冷たいぜよそれは。日本語を教えてやった仲じゃないか」 「あなたに教わってない! だいたいちゃんと日本語喋れるのに変な日本語しか教えない人なんて信用できないんだよ! かおりがいなかったら大変なことになってたんだから」 はっはっはと笑う土御門をインデックスは睨みつけた。 「で。一体何の用?」 「え? いや別に、見かけたから声をかけただけぜよ。今日はいい天気だし、この駅はあっちこっちの遊び場に繋がってるからにゃー、声をかければ誘いに乗ってくれる可愛い子もきっといるに違いない! ってな感じで」 土御門元春は軽薄な男である。 それは作った顔というよりも地の一部な気がする。 だから、その態度が作り物か本音か、見分けがつかなかった。 「実はさっき巫女装束を着た超絶美人がコッチに向かってるのを見かけてにゃー、他の男が何人も玉砕してたから、ここは一発自分を試してみようかと」 「……そう」 時間に余裕は持たせてきたからいいが、すでに予定の電車に乗り損ねるのが確定している。 これ以上付き合ってエリスに迷惑をかけるのは嫌だった。 「それじゃ私はもう行くんだよ。その格好で清楚な女の子を口説くって成功率を舐めてるとしか思えないけど」 「それはどうかにゃー。なあ、答えを聞かせてくれるかい?」 土御門が、インデックスの後ろの、ごく近くに向けて声を投げかけた。 振り返るとすぐ傍に巫女服の少女、姫神秋沙がそこにいた。 「格好は。気にしないけど」 「おおっ! 八人目にしてついに脈アリ!!」 「そもそも私は君に興味がないから」 地面にのの字を書く土御門を尻目に、インデックスは姫神を見つめる。 「今日はこないだの黒服の人達、連れてないの?」 「きっとそのあたりにはいると思うけど」 「ふうん」 「気になるの?」 「……普通はあんな人たちを連れたりなんてしないんだよ」 「そうだね。でも。私は普通じゃないから」 「どう普通じゃないわけ?」 「わたし。魔法使い」 「だからそんなわけないんだよ!」 学園都市にそうそう魔術師なんているわけが―― ――目の前で落ち込む当代きっての陰陽師には目を瞑った。 「そんなわけないって言われても。私は魔法使いになるのが目標だから」 「なるのが目標って。それなら、あなたはやっぱり魔術師じゃないんだね。魔術なんて使えないんでしょ」 「……使える」 「え?」 「最悪の。だけど」 「どういう意味?」 姫神はそれには取り合わなかった。 「あのー……よかったらそろそろ声かけてくれると助かるにゃー」 「あ、まだいたの?」 「インデックス、それは冷たいにゃー」 「知らない。って、私もう行かなきゃ」 長居すればもう一本、電車を遅らせることになる。 それでも遅刻は免れるが、ギリギリで走るのは嫌だった。 ……のだが。 すっと、姫神が胸元からチケットらしきものを数枚取り出した。 すぐ目の前にあるクレープ屋の、無料試食券。 「お礼」 「え?」 「この前。助けてくれたでしょ? そのお礼に。一枚あげてもいい」 今日は朝は当麻がいなくて味気ない朝食だった。 まだまだ、胃には空きがある。 ――――インデックスはその瞬間、電車一本分遅らせることを容認した。 ピリリリとけたたましく鳴る音で、美琴は意識が僅かに覚醒した。 起きなきゃ、という義務感だけで体を何とか引き起こして、アラームを止める。 「う……」 惰性で顔を洗いに行こうとして、軽くふらっと体が横に揺れた。 調子がおかしい。 いや、こんな精神状態で好調とはいかないだろう。 だが、気のせいかと思ってもどうも見過ごせない、確かな不調を美琴は感じた。 そんな自分の失態に、起きてまだ間もないのに、もう苛立ちを覚えている。 「熱なんて……最近出したことなかったのに」 心のどこかで、無理もないと囁く自分がいる。 深夜から次の日の昼前まで町を徘徊したし、思い出したくないこともいくつもあった。 戦闘もしたし、胃から物がなくなるまでトイレで吐いた。 体力を失って当然だ。 ……そんな弱弱しい自分に腹が立つ。 そんな理由で、自分は許されることなんてないのに。 しんどければ休んでいい学校とは違う。 どんな目にあったって、動けるのなら動かなきゃ、いけないんだから。 夜までに、しなければいけないことが美琴にはあった。 ――――テレスティーナさんに、絶対能力進化実験のことを、聞き出す。 実験を止めるのに、主役である一方通行を排除することと、妹達を逃がすことの二つは選択できない。 どちらも、美琴には止められないから。 それを再確認するだけで、足がすくんだ。 超電磁砲は美琴の唯一の必殺技ではない。 手数の多さ、応用力がきっと一番の武器だとは分かっている。 それでも、やはり二つ名にもしている技をあっさり封じられたことは、ショックだった。 結局、美琴に出来るのは絶対能力進化 レベル6シフト に関わる施設を破壊し、プロジェクトを進行不可にすることだけ。 ハッキングによって手に入れた関連施設は、どこも美琴になじみがない。 日中にはアクションを起こせなかった。 今、美琴がアクションを起こせるのは、口の悪い大学生くらいのと当麻の残した、テレスティーナという糸だけ。 もしテレスティーナが学園都市の暗部、こんな非道に手を染めているのなら、春上が危なかった。 「早く、行かないと」 木山のところに行くという白井たちには悪いが、そちらに付き合う気はなかった。 なにか重要な情報があれば三人がそれを手に入れて、何とかしてくれるだろう。 不快な寝汗をタオルで拭ってから、まごつきながら美琴は制服を身につけた。 テーブルに置いた携帯を見ると、白井からの連絡が入っていた。 曰く、木山と共にMARの病院を目指すらしい。 行き先は、これで同じになった。 「合流しても……ね」 あちらはもう着く頃だろう。 むしろ、会わないほうがありがたかった。 自分だけでテレスティーナに対峙するつもりだった。 自分がやったことのツケを誰かに払ってもらおうなんて考えれば、きっと良くないことが起こるのだ。 朝の、あの瞬間がフラッシュバックして、ボタンを留めていた手で美琴は胸を押さえた。 誰かにすがるのは、怖かった。 「おはよう! エリス!」 「うん、おはよう」 「ギリギリ間に合ったよね?!」 「大丈夫だよ。っていうか、遅れてもそんなに気にしないけどね。寮まで来てもらったんだし」 ぜいぜいと息をつくインデックスにエリスは苦笑いを返す。 寝坊でもしたのか、随分急いで来たらしかった。 「家を出るのが遅かったの?」 「えっ? えと……うん」 なんというか嘘なのがバレバレの態度だった。 理由は良く分からないが、迷ったか道草を食ったかどちらかだろう。 行きがけに奢ってもらったクレープは非常に美味しかったが、それにつられて遅刻寸前になったとエリスに告白するのはさすがにインデックスも恥ずかしかった。 「さて、今日は何しよっか。いいなあ、インデックスは宿題ないんだよね?」 「え? うん。まあ別にあってもすぐ終わるけどね」 「へー、優等生だったんだ」 そりゃあどんな内容だってインデックスは一度聞けば全てを記憶できるのだから。 理解は記憶することと違い必ずしも一瞬ではないが、人よりはずっとアドバンテージがある。 記憶力は生来のものだし、ズルをしていないのだからインデックスはそれを恥じることはなかった。 「ここの勉強ってどんなの?」 「え? まあ普通の学校の内容と大部分は同じだよ。宗教の授業が追加されるくらい。ここは修道士を育てるとか、そういう場所じゃなくて、言ってみれば孤児院みたいなところだから」 「ふーん」 「インデックスもすぐ慣れるといいね。それで、何したい?」 「あ、今日は行きたいところがあるんだけど……」 「どこ?」 「みつこの病院。今日、退院するって言ってたから」 「あ、そうなんだ。おめでとう」 「うん!」 エリスはその誘いに付き合うか、迷った。 この教会の敷地の外に出るのは、怖い。 吸血鬼の遺灰から取り出した抽出物を埋め込まれ、自身が吸血鬼になってすぐにエリスはここに逃げ込んだ。 そのときから外の世界への恐怖心はずっとあったけれど、ここ数日は、垣根の前で我を忘れたあの瞬間を思い出して、殊更外出に臆病になっているのだった。 「それで、エリスがよかったらとうまとみつこと一緒に、お昼ごはん食べて遊びたいな、って」 「うん」 「どうかな?」 「……いいよ。そうだね、ちょっと最近外出してなかったから、体を動かしに行こうかな」 「本当? やった! エリス、準備はできてる?」 「うん。って言っても、出かけるのにそんなに準備もいらないからね」 垣根と正式に付き合うようになってから、心の余裕が随分と出来た。 このまま引きこもっていれば垣根に退屈だと思われるかもしれないし、一度くらい、外に出たって問題ないだろう。 エリスは棚の一つを開けて必要なものをポーチに詰めた。 隣でインデックスが眺める中、準備は本当にあっという間だった。 「よし、行こっか」 「うん」 さっき乗ってきた電車のホームにインデックスはトンボ帰りすることになる。 ちょっとそれがおかしかった。 真夏の炎天下ではあるが、駅まで遠くはないし、日陰もそれなりにあった。 寮の入り口を出て、教会の敷地と大通りを隔てる門をくぐる。 「エリスは指輪とかつけないの?」 「えっ?!」 インデックスが、お洒落なワンピースを来たエリスにそんなことを尋ねた。 ちょっと唐突過ぎる質問だった。 思わずそれにわたわたする。 なにせ、インデックスが垣根との話を振ってくるとは思わなかったのだ。 「ま、まだ早いよ。帝督君とお付き合いしだしたの、ついこないだだし」 「そういうものなのかな? 最近、みつこがとうまにねだってたから、エリスも欲しいのかなって」 「え、えーと。それはやっぱりあれば嬉しいけど、上条君と婚后さんみたいに長い付き合いのカップルじゃないと」 「とうまとみつこもそんなに付き合ってから長くないって言ってたよ」 「そうなの?」 「うん。まだ二ヶ月くらいって」 「二ヶ月かあ……」 自分と垣根の関係の、十倍以上の長さがあった。 あっという間なのかもしれないが、今の自分にとってはずっと先に思える。 それまでに、何度、帝督君はキスしてくれるんだろう。 それに、その先、とか。 「エリス?」 「なんでもない」 インデックスにばれないように、一瞬妄想に浸った自分を自戒しつつ、エリスは足を進めた。 程なくして、駅にたどり着く。 時間のせいもあるだろうが、人はまばらだった。 二人で切符を買って、モノレールに乗り込む。 「この電車ははじめてなんだよ」 「私も」 「……ちゃんと着くかな?」 「大丈夫だとは、思うけど」 不慣れな二人で顔を見合わせて、モノレールの進みに身を任せた。 「ねえエリス」 「うん?」 「エリスの彼氏さん、私のこと何か言ってた?」 「え、帝督君が? どうして?」 「こないだとうまと一緒に歩いてたら会ったんだよ。それで、とうまみたいなことを言うからつい、いろいろ言っちゃって」 「色々って?」 「エリスを泣かせちゃ駄目だよとか、そういうの」 「……もう、恥ずかしいよ」 「エリス、キスしたんだよね……?」 「えっ?! もう、だからそういうのは恥ずかしいから駄目」 さすがに友達に根掘り葉掘り聞かれるのは恥ずかしくて、エリスは強引に会話を切った。 チラチラとインデックスも照れた感じでこちらを見つめてくる。 なんだろう、上条君がキスするところとか、見慣れてるんだよね。 だったら何でこんなに気にしてるんだろう。 それがエリスの疑問だった。 問いかけないから答えはないが、インデックスにとっては、当麻と光子のキスはもう別物というか、それは当たり前のことなのだ。 しかしやっぱり自分の友達が彼氏を作ったと聞くと、なんだかやっぱり女の子めいた気持ちになるのだった。 何か別の話を振らなきゃ、と二人が思案していると、本日二度目となる携帯のコールが鳴った。 「わっわっ、またなんだよ! 誰なのかな、直接会いに来てくれればいいのに」 さっき光子に笑われたので、ボタンを押す前にディスプレイを見る。 知らない番号だった。 インデックスはそれでむっとなった。 やっぱり、携帯電話は全然ひとにやさしくない! 「は、はい。こちらIndex-Librorum-Prohibitorum……です」 「……久しぶり。誰だか分かるかい?」 「ステイル?!」 携帯から聞こえてきた声は、今まで一度も電話越しでは聞いたことのない、かつて身近にいた人の声だった。 「今いいかな?」 「えっ? うん、いいけど……」 「ちょっと学園都市に来る用事があってね、良ければ、会って話せればと思うんだけれど。……君にも関わりのある、問題事が起こっていてね」 「えっ?」 「なんにせよ電話じゃ心もとない。どこかで会えないかと思ってさ」 ちらと横を見る。 エリスが首をかしげてこちらを見つめ返した。 「ステイル。それって、急ぐのかな?」 「え? ああ。遅らせるほど事態は悪化するからね、今日がいいんだけど」 「そう。私、いまみつこのいる病院に向かってるんだけど、場所とかわからないよね」 「いや。上条当麻と婚后光子の場所なら把握しているよ。困ったことに君がそこにいなかったから、なんとかして電話番号を手に入れたんだけど」 「……じゃあ、みつこのいる病院で待ち合わせでいい?」 「ああ。そこで合流しようか」 「うん。他に用はある?」 「え? い、いや特にはないんだが」 「ごめん。友達と一緒にいるから、切るね」 返事を聞かずに、インデックスは通話をオフにした。 ドキドキと、緊張に心臓が鳴っていた。 自然に、話せただろうか。 ステイルの期待するインデックスで、いられただろうか。 強張った顔のインデックスを、エリスが見上げる 「あの、どうしたの?」 「エリス、ごめんなさい」 「え?」 「もしかしたら、遊べなくなっちゃうかも。ごめんなさい。せっかくここまで来てくれたのに……」 はしごを外されて、エリスは戸惑った。 インデックスが誘うからためらいのあった外出をしたのに。 だがすぐに思いなおす。 インデックスにとっても予想外だったのだろう。 そして楽しそうなことはなさそうだ。 それなら、責めるのも悪いだろう。 垣根とも連絡を取れば会えるかもしれないし、光子のお見舞いというか、浴衣の件でお礼を言いにいくちょうどいい機会ではあった。 「ん。いいよ。もし駄目になったら、帝督君誘ってどこかに行くから。それに婚后さんにもお礼を言わなきゃね」 「ごめんなさい」 もう一度いいよと言って、エリスは窓の外を見た。 病院まではもうそう遠くない。 自分にインデックス、光子と当麻、そして入院中の春上、最後にステイルという名の男の子。 なんだかにぎやかになりそうだなと、意外と人嫌いではないエリスは考えながら景色を見つめた。 「さて、言われたとおりのことは済ませてきたぞ、アレイスター」 ドアもなく、階段もなく、エレベーターも通路もない、建物として機能するはずのないビル。 その中で、土御門元春はシリンダーの中に浮く男に声をかけた。 足を上に、頭を下に向けた銀髪の人間。 緑の手術服を着て、赤みを帯びた液体に使っている。 真っ暗な部屋を彩るように数多くの計器とモニターが光を発しているが、部屋の全体を照らしてはいない。 「ご苦労。事はつつがなく進んだのかね?」 「ああ。これで禁書目録と吸血殺しが繋がった。これはどういう目的だったんだ?」 「君に旧友と会う時間をあげたのが不満だったかい?」 「ぬかせ。貴様のプランに無関係なわけがないだろう」 「ふむ。繋いでおくと役に立つ線というのもあるのだよ。特に今回の件は私の采配で事を運びにくいのでね」 アレイスターが言うのは、この街に入り込んだ錬金術師を追い払う件だった。 まるで無策かのように困った声色で言うが、土御門の前で浮いているのはそんな隙のある生き物ではない。 「ハン。さんざん今ここでステイルをけしかけたんだろう?」 「魔術師の考えることは私には分からないさ」 「お前が言うとジョークとしてもブラックに過ぎる」 男性のように、女性のように、老人のように、子供のように。 アレイスターの笑みは友好的な表情のはずなのに、土御門はそこから何も読み取れなかった。 「ところで吸血鬼とやらはどうなっている?」 「とやら、などと知らないような言い方をするな。お前の手の平の上で踊っている駒だろう。今は禁書目録と行動を共にしているようだな。それとも第二位との関係のほうが知りたいのか?」 「どちらも気にはなっているよ。アレが私の第二候補 スペア・プラン と交流してくれるのなら、プランの相当な短縮になる」 「どうせお前が手引きをしたのだろう?」 「まさか。人と人の交わりはそう簡単には操れぬよ」 「そうは思えないがな。何せ第五架空元素 エーテル と未元物質 ダークマター の組合わせだ」 報告を済ませて、さっさと土御門はここを立ち去る気だった。 だがもう数分は、迎えの空間移動能力者 テレポーター が来ない。 地面を這うコードの一つをつま先で弄びながら、土御門は気になっていたことを問いかけた。 「科学の最先端を統括するお前が、今更第五架空元素に興味を持つ理由はなんだ」 「考えすぎだよ。計算外の事態、吸血鬼を探す錬金術師が学園都市に忍び込んだのでそれを活用しているだけさ」 「空にあんなモノを浮かべておいて、言うに事欠いて『計算外』とはな。なあアレイスター。科学は一度第五架空元素 エーテル を捨てた。それは知っているだろう」 「今更ローレンツ収縮の講義かね? 学園都市の長である私に向かって」 「お前が忘れるわけがない。お前にとっても転機となった年に発表された理論だからな。科学がその理論体系から第五架空元素を排斥した1904年。――――それはお前が、守護精霊エイワスと交信し、『法の書』を書き上げた年だろう? そして100年後の今、お前は科学にソレを拾わせようとしている。お前は、それで何をするつもりなんだ」 アレイスターは浮かべたままの微笑を少しも変えずに、こう答えた。 「汝の欲する所を為せ。それが汝の法とならん」 *********************************************************************************************************** あとがき アレイスターが法の書を書き上げた年と、ローレンツがローレンツ収縮の論文を書き上げた年がともに1904年であるというのは史実です。 歴史的事実として、アレイスターはまさに科学が錬金術や魔術的・神学的な世界観と決別した時代に生きていたんですね。 前へ 戻る 次へ
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/3898.html
ア行 壊滅手配(アウトランク) 碧海華麗(あおうみかれい) アンチスキル=アグレッサー 警備員化学分析センター(アンチスキルかがくぶんせきセンター) 学園都市の暗部(未編集) ヴァルアート=シグナル ヴィヴァーナ=オニグマ オペレーションネーム・ハンドカフス カ行 カキキエ隧道 学園都市最大の禁忌(未編集) 覚悟のスク水昇天先生@クソゲークソドラマは全部墓場に送ります 木原殺し 木原端数(きはらはすう) 木原平均(きはらへいきん) 硬俵総太(こうたわらそうた) 光明(こうみょう) コンシェルジュ コントローラ サ行 シークレットエクスプレス シークレットレジデンス 週刊心眼(しゅうかんしんがん) セインティウム セルロースナノファイバー ソダテ タ行 電話の声 『ドレスの少女』 ドレンチャー=木原=レパトリ ナ行 波野(なみの) ニコラウスの金貨 ハ行 工場否定(パーフェクトフィルム) ハイボルテージ=カッティング法 観光喰い(バキュームピース) 初岡(未編集) 花露過愛(はなつゆかあい) 花露妖宴(はなつゆようえん) 信号寄生(パラサイトハードウェア) 氷神(ひかみ)(未編集) フリルサンド#G フレア ペットブリーダー ベニゾメ=ゼリーフィッシュ 放電機械油 ヤ行 黄泉川愛穂(よみかわあいほ) ラ行 楽丘豊富(らくおかほうふ) リサコ レディバード 防御の剣(レフトアーム) A~Z bC-96/R NB20
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1502.html
「一方通行とラブレター 打ち止めと絵本」 学園都市の住民の殆どが寝静まった深夜。 一方通行は一人机に向かい、唸りながら何かを書いていた。 「うーン。これだと押しが足りねェなァ。書き直すか」 漸く完成したソレを丸めてゴミ箱へ放り投げる。 ソレは綺麗な軌道を描き、ゴミ箱から溢れ出てしまっている紙の山にぶつかった。 恐らく一方通行はこれまでにかなりの枚数を書いては捨てているのだろう。 「上条当麻さン。俺は……」 書いている文章が口に出ているのも気が付かないほどに没頭し、学園都市最強とまで言われた彼が、人目に付かない深夜にコソコソと膨大な量の紙を消費してまで書こうとしている物は何か? 「もし、よろしければ俺と付き合って下さい……」 そう。ラブレターである。 手紙を書き終えた一方通行は顔を赤くしながら、手紙の文章を読み直すのに二十秒。目を閉じて上条当麻が受け取って読んだときの光景を浮かべるのに十六秒。目を閉じて浮かんだ光景を元に、この手紙の内容で良いのかを確認するのに三十二秒。 準備は整った。 「さァて、後は……」 この手紙を持って上条当麻に会いに行くだけだ。 手紙を渡した光景を想像したのか一方通行は更に顔を赤くする。 彼は妄想に浸り掛けたその時、床の軋む音がした。 「誰だァ? こンな時間に」 一方通行は部屋の扉を凝視する。 部屋の扉が開かれ、闇の中からとても眠そうな打ち止めが現れた。 「……あれー? こんな時間に何をしてるのってミサカはミサカは寝惚け眼を擦りながら尋ねてみる」 「なんだテメェかびびらせンなよ。……黄泉川かと思ったじゃねェか」 一方通行は手に持った手紙をさっと背後に隠しながら平静を装って言う。 ほぼ一瞬で作り上げたその顔はあまりにも自然で、まさかさっきまでラブレターを書いていたとは思わないだろう。 よく見れば冷や汗でびっしょりなのだが。 「?? こんな真夜中に何をやっていたかは知らないけど、早く寝ないとお肌に悪いよ?ってミサカはミサカは人生の先輩として意見してみる」 「眠そォに目ェ擦ってるヤツが何言ってるンだか。ほら、寝るぞ」 「一緒に寝よーってミサカはミサカはさりげなく誘ってみたり」 全然さりげなくねェよ、と思いながら溜め息を吐く。 いつもなら一蹴するところだが、何だか打ち止めが異様に可愛く思える。 今日ぐらいは一緒に寝てやってもいいだろう。 「あァ。いいぞ」 「ほ、ほんとに!? ってミサカはミサカは目をキラキラさせながら言ってみる!」 「ンなことで嘘付いてどうすンっだつーの」 「やったぁ!ってミサカはミサカは言葉に表せない感動を行動で表現してみる」 打ち止めは、一方通行と一緒に眠れると言うのがよほど嬉しいのか、ぱたぱたと足音を立てて何処か消える。 少しして腕にいっぱいの絵本を抱えて戻ってきた。 「絵本って言うのは少し子供っぽいかもしれないけど、ミサカぐらいの年の子は寝るときにみんな読んで貰うんだってってミサカはミサカは……」 「わァかった、わかった。何でも読んでやンよォ」 まるで子守をする親のようだな、と思いながら一方通行は打ち止めを連れて寝室に入って行った。 翌朝、警備員(アンチスキル)の仕事から帰ってきた黄泉川は、絵本を片手に持ちながら眠る一方通行とその胸に頭を埋めて眠る打ち止めの姿を見て、 「ほんっと、幸せそうに寝てるじゃん。まるで、お母さんに甘えながら寝る子供みたいじゃん……」 と言ったとか言わなかったとか。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2418.html
ヒーローと超電磁砲は… とある秋の休日の朝、吹寄整理は公園内でランニングを行っていた。 最近の運動不足で体がなまっていると感じたのか、ランニングは毎日の日課となっており、今日もすでに数キロは走っただろう。「ふぅ……ちょっと休憩しようかしら」 吹寄は独り言をつぶやき、足を止めた。 彼女の額には汗が光る。「喉、渇いたわね。確かこっちの方に自動販売機が……」 この自販機というのは、例のお金を飲み込む魔の自販機である。 そんなことを知らない吹寄は自販機に近づき、ポケットに入っていた小銭入れから100円玉を取り出す。 今日もまた1人尊い犠牲者がでてしまった……と思いきや、吹寄は100円を自販機に入れる寸前で手が止まった。「え……?」 思わず出てしまった小さな声。 おでんジュースとかいうわけのわからない飲み物を目にしたからではない、彼女の目に世にも奇妙な光景が映ったからである。 その光景とは――――――「お待たせ! ごめん、ちょっと準備に手間取っちゃって……えと……待った……?」「いいや俺も今来たとこだよ。ていうかあれだな、今日の服可愛いな、超似合ってる」「ほんとに? 嬉しいっ! 当麻大好き!!」「うおっ!! おいおい急に飛びつくなよ。 危ないだろ? ほら手出せって、早く行こうぜ?」 なんていう会話が終わると共に、例の不幸少年とビリビリ娘は仲良く手を繋いで公園を去って行った。 それはまさに“ありえない”光景。 あの鈍感な少年に彼女がいるなんて聞いた事もなければ、そんな素振りを見た事も無い。 というか自分の記憶が正しければ、上条は昨日も土御門や青髪ピアスと共に彼女がほしいだのどうだので言い合いをしていたはずだ。「…………気のせい、ね。さてランニングの続き続きっと……」 吹寄は今のを自分の気のせいとして、ジュースも買わず再び公園を走り出した。 ♢ ♢ ♢ 場面は変わってこちらは街中。 特に事件も起こらない平和な町には、今日も多くの学生で溢れていた。 にぎやかで騒がしい人々、その中に一際騒がしいグループがあった。「ねー早く早くー!! ってミサカはミサカは大声であなたを催促してみたり!!」「あーはいはい。 つかそんな急ぐ必要なンてねェだろうがよォ……」 急かす打ち止め、杖をつきたらたらと歩く一方通行、そしてその側にもう1人。「何? もうバテたの? もやしっ子はスタミナないなー、なさ過ぎてひくレベル」 もうお分かりかと思うが『妹達“シスターズ”』の末妹、番外個体だ。 彼女の相も変わらずの毒舌に一方通行は、「うるせェよ、こちらと杖ついてンだからしょうがねェだろうが。 それにこのスピードなら別に遅かねェ」「あ、そ。 まあそんなことどーでもいいんだけどね……って、上位個体?」「? おい、そンなとこで止まってどうした。 なンかあったの……か…………」 なぜか止まっていた打ち止めの動きに続いて一方通行の言葉も止まる。 彼らの先に見えたものは、「えへへ……当麻の手温かいわね。 ずっと繋いでたいなー」「俺は別にかまわないぞ? それに寒いなら手だけじゃなくて上条さん全身を使って暖まってもらっていいんですけど?」「全身………………そ、それは夜にとっとく……/////」 超絶ラブラブっぷりを見せつけるヒーローとオリジナル、周囲の目なんざ気にもしていない様子だ。 それ見てあっけにとられていた3人だが、2人の姿が見えなくなってから番外個体が「……………あの2人って付き合ってたの? おねーたまは奥出だしヒーローは鈍感だし、付き合う気配なんてないと思ってたんだけど、っていうか完全にキャラ違うよね」「いや……俺に聞くなよ……一昨日アイツに会ったけどよォ、そンな話全くしてなかったンだが……俺は夢でも見てンのか?」「…………はっ!! MNW(ミサカネットワーク)が大変なことに!? ってミサカはミサカは妹達の反応の恐怖に震えてみたり……」 ♢ ♢ ♢ 固法美偉は混乱していた。 理由は簡単、友人である御坂美琴の様子がおかしいからだ。 道を挟んで向こう側に見える美琴は、輝かんばかりの笑顔を見知らぬ少年に見せている。 佐天涙子は驚愕していた。 理由は単純、いつもは勇ましい美琴がデレデレしているからだ。 今目に映っている美琴は、いわゆる恋人繋ぎでツンツン頭の少年と手を繋いでいる。 初春飾利は困惑していた。 理由は明白、自分の情報に全く無い出来事が目の前で起きているからだ。 これまで美琴が付き合っているという話など、聞いた事がなかった。「初春、御坂さんが付き合ってるって知ってた?」「……知りませんでしたけど……固法先輩はどうですか……?」「いや……全く聞いた事ないわね……」 そんなことを3人が話している間に、2人はどこかへ歩いて行ってしまった。 呆然と立ち尽くす3人、あまりに驚いたせいか、追いかける気にもならなかった。「私たち夢でも見てるのかしらね……」「とりあえず言える事は……絶対に白井さんに見せちゃダメだね」「そ、そうですね、もし見つかったら相手の男の人殺られちゃいますよ……」 ♢ ♢ ♢ 休日という事もあり多くの学生で溢れる学園都市の第7学区、そんな中2人の「う~ん!! やっぱりここのランチは別格の美味しさなのですよー!!」 飲食店にしては異常なほどハイテンションなのはとある高校の教師、月詠小萌だ。 見た目は小学生の彼女は、目の前のこの店特製ランチ(大盛り)をほうばっていた。 そんな小萌と向き合って座っているのは、背丈もテンションも正反対のこの人、「相変わらずこの店だとテンション高いじゃん。 ま、美味しいのはわかるけど」 教師兼警備員(アンチスキル)で、、休日でもやっぱりジャージ姿の黄泉川愛穂だ。 食事の量も小萌ほど多くなく、適量のランチセットが黄泉川の前には置かれていた。 小萌の食事の量に半ばあきれつつ、自分の料理に箸を伸ばした時、「ん……あれは……」 黄泉川が気づいた。 向こう側の席に見たことのある少年が座っている。 黄泉川の座っている位置からだと、彼の向かいの席は上手い具合に隠れて見えないが、どうも1人ではない様子だ。「あれって……小萌のとこの生徒じゃん?」「え? あ! 上条ちゃんなのですよ!! お~い、上条ちゃ……」 上条の存在に気づいた小萌は、手にしていたナイフとフォークを皿の上に置き、手を挙げ呼び寄せようとした。 が、その動作の途中で小萌は凍り付いた。「ん? どうしたじゃん? 急に黙ったりして何かあった……」 小萌の反応が気になり、黄泉川は身を乗り出し上条が座っている席全体を見る。 彼女達がみた光景とは「はい、あ~ん♪」「ん……うん、美味いなー。 じゃあ……ほい、お返し」「……おいしー! ……えとね、そっちのも食べさせてほしいなー、なんて……」「はいはいお易い御用ですよ、姫様?」 店内でも周囲を気にせず、お互いの料理を食べさせ合っており、当然のごとく注目を浴びまくっている。 しばらく視線を外せなかった小萌と黄泉川だが、ようやく静かに元の位置に戻り「…………あれは……多分別人ですよ、他人のそら似ってやつですねー」「小萌……すっごい棒読みじゃんよ。 まあ気持ちはわかるけど……」 ♢ ♢ ♢「はぁ……俺のせっかくの休日が……」 浜面仕上は大きくため息をついた。 最近は何かと忙しく、今日は実に一ヶ月ぶりに得た休日、久しぶりに羽を伸ばそうと考えていたのだが、「浜面、次これ持って。 あ、落としたら殺すから」「ちょっと浜面、超だらだらしてないで運んでください」「はまづら、がんばって」「…………はい」 と、まあ『新アイテム』のメンバーの荷物持ちをさせられているわけである。 午前中から買い物に付き合い続け、彼の両手には大量の荷物があり不満は溜る一方だ。(滝壺と一緒にいられるのは嬉しいけどさ、なんで麦野や絹旗までついてくるんだよ……つーかこのペースで荷物が増えたら…………無理!!) とは言え荷物持ちを放棄なんてしたら殺される。 なんとかしてこの状況を打破できないものか、なんてことを浜面が考えていると「う~ん。 この店可愛い服多いなぁ」 という聞き覚えのある声。 ひょっとして我らのヒーローではないか、と思いそちらの方向に目を移したのだが「は?」 浜面の口から間の抜けた声が飛び出した。 その原因とは「これなんか美琴に似合うんじゃない? ほら、サイズも合うしさ」「そう? ほんとに似合うかなー……」「もちろんさ!! 最高に似合うし可愛く見えるよ、上条さんのお墨付きだ」「も~そんな調子のいいこと言って~♪ じゃあこれ買っちゃおうかなー♪」「よっしゃ! じゃあ俺がプレゼントしてやるよ」 なんてやりとりが繰り広げられた後、ツンツン頭の少年と茶髪の少女はレジの方向へと向かっていった。 残された浜面はというと、「…………え? 何あれ? 何? いやマジでなんなの?」 開いた口が閉まらなかった。 今のは本当に自分の知っている上条当麻だっただろうか、自分の目を疑い浜面が何度も目をこすっていると「は~ま~ず~らぁ~……お前何落としてんの?」「ッ!!」 後ろから聞こえてきた嫌な予感のする声。「あの……どうしましたか?」「どうしましたか? じゃねぇよ!! てめぇの足下見てみろ」「足下…………!!」 浜面は麦野に言われるがまま、自分の足下に目を移してみると、先ほどまで手にしていた麦野と絹旗の買った荷物があった。 どうやら目の前の状況に驚いた際に落としてしまっていたらしい。 中身は主に服なので、落としても全く問題ないように思えるのだが、そんなことを言って納得する麦野ではない。「…………」「落としたら……殺すって言ったわよね?」 この日、浜面は地獄を見たという。 ♢ ♢ ♢ この後も学園都市の混乱は続いた。 何たってフラグ王子の上条と、学園都市第3位で知名度No1の美琴が街中でいちゃいちゃしているのだから、上条を好きな者や美琴のファンである者にとってはたまったもんじゃない。 発狂寸前である。 このまま放っておいては、今以上に大変な事態になることは避けられない。 そこでとある人物たちが動いた。「はァ……なんでこうなったンだ……?」「俺に聞くなって! あいつらがおかしくなったせいで麦野に殺されかけたんだからな!!」 その人物とは、一方通行と浜面、絹旗に番外個体。浜面は相変わらず(?)復活が早かった。 番外個体ですらヤバいと思える状況だったので、彼らは上条と美琴を街中で見つけ、黄泉川のマンションへと連れてきた。 途中、デートの妨害だなんだのと、かなりの抵抗を受けたが、そこは気合いで頑張った。 ちなみに打ち止めは麦野と滝壺に預けておいてある。 で、今どんな状況かと言うと、「もー……せっかくのデートだったのに……」「ほんとだよ。 一体なんだっての。 あ、美琴もっとこっち寄れって、寒いだろ?」「うん♪」 ぴったりとくっついて座っている2人は、顔を見合わせて『ねー』とか言っている。 なんだか微笑ましいような光景だが、このままにしておくと元に戻った後に上条は罪悪感で、美琴は恥ずかしさで倒れそうなので、浜面が代表して「あ、あのさ、上条」「ん? どうした浜面? ていうかなんで俺らはここに連れてこられたんだ? さっきはここに着いたら説明するって行ってたんだから早く説明してくれよ」「いや、あのそれはだな……もうちょっと後で説明するからさ、その、離れたらどうだ?」「離れるって?」「だから……」 浜面は上条と目を合わさずに美琴を指差した。 それを見た上条は『何言ってんの?』というような表情で「はぁ? なんで離れないとダメなんだよ。 俺達は付き合ってるんだから離れる必要ないだろ? ていうか離れたくないし」「そうよ! 当麻と離れるなんて嫌に決まってるじゃない」「……さいですか…………」 浜面は諦めた、もうこのバカップルは止められない。 別に今だけ離れてくれればいいのだが、それも無理だ。 浜面はその場を離れ、上条たちから見えないように、台所で開かれている作戦会議の場へと戻った。「ごめん俺じゃ無理」「ま、浜面最初から超期待してないですけどね」「ひでぇ……俺にしては頑張った方なのに…………」「それにしても…………治る気配ねェな。 そもそもなンでこンな面倒くせェことになったンだ?」 一方通行の言葉にう~んと悩む、浜面、番外個体、絹旗。 いの一番に口を開いたのは番外個体だった。「さあ? 昨日までは普通だったのに今日になっていきなりだからね。 やっぱり魔術か科学が関係してるんじゃないの?」「まァ、それしか考えられねェわな。 魔術だと土御門に聞かねェとわからねェが、科学だと考えられるのは第6位か…………科学、魔術意外で他に原因なンて……」「そうだ!! わかった!!」 突然、浜面が大きな声を出した。 その声をうっとしいと思ったのか、番外個体は睨みながら 「わかったって原因が?」「ああ! 簡単な話だったんだ!! あの2人は偽物なんだよ!!」「…………はァ?」「浜面、バカとはわかってましたが超バカですか?」「バカバカ言うな!! ていうかさ、とりあえず見とけって!!」 浜面の言う事を全く理解できない、そんな3人を尻目に浜面は再び上条と美琴の元へ向かった。 そこでは……「最近寒くなってきたわね。 風邪引かないようにしなきゃ」「そうだなー。 まあ俺にも美琴がいるから寒くないけどな。 ほら、こうすれば温かいだろ?」「うん……確かにこうやって後ろから抱きしめられると温かいわね……えへへ」 座った状態で上条が後ろから美琴を抱きしめていて、2人は普段では考えられないくらいいちゃついていた。 もはやザ・バカップルだ。 そんなバカップルを目にし、浜面は一つ咳払いをして、2人の前に立った。 「な、なあお前ら、ちょっといいか?」「「ダメ」」「…………」 浜面、撃沈。 予想外の返しをくらい若干怯むも、ここで引き下がるわけにはいかない。 浜面も負けじと言い返す。「ダメってさ、なんでダメなんだよ!!」「今いちゃいちゃしてるからだよ。 空気読めよなー浜面」「そうよ! せっかくの休日だってのにデートの邪魔されるし……」「…………あのさ、そんないちゃいちゃしてる2人にお願いがあるんだ。 単刀直入に言う。 キスしてるとこ見せてくれ!! そしたら帰っていいから!!」 あのアホは何を言っているんだ、一方通行と番外個体は浜面の斜め上を行く言動に頭を抱えた。「……どーすんの第一位、あのアホおかしなこといい出したけど」「…………俺はもう知らねェよ。 勝手にやらしとけ」 呆れすぎて一方通行は全てを投げ出した。 が、しかし、浜面にはそれなりの理由と考えがあった。(この2人は偽物に決まってる!! でなきゃ上条がこんなことするわけねーし、第一アイツに科学も魔術も聞かねーじゃん!!) 美琴はともかく、上条は『幻想殺し』を持っているため彼に特殊能力は聞かない。 ということは、目の前にいる上条は偽物だ!!と考えたのだ。 浜面にしてはかなり頭が冴えたほうだったのだが、「ここで? いいわよ」「へ?」「じゃあ美琴、ん」 浜面の目の前で、上条は何も気に留めることなく、美琴の口に優しくキスをした。 それはほんの一瞬の出来事だったが、確かに2人の唇はふれあってた。 正真正銘のキスで、2人はとても幸せそうに笑顔を見せ合っている。 その一方で浜面の顔は青くなっていく。「…………あっれぇ~……? お、おっかすぅいなー……」「はぁ~まず~らく~ん……ちょっとこっち来ようか」 浜面は番外個体によって回収され、台所へと連れて行かれた。 そこには頭を抱える絹旗と、結構怖いレベルの一方通行が立っていた。「浜面ァ……あれどうすンだよ。マジで」「ど、どうって何が……」「何が? じゃねェよ!! お前のせいでしちまったじゃねェか!! 元戻った時に記憶残ってたらどうすンだ!?」「さすがのミサカでも今のはないと思うわ。 そもそもなんで偽物と思ったのよ」「そ、そりゃ上条の科学とか魔術が効くわけないから偽物かと……」「全くほんとに超どうするんですか!? 半分笑ってますけどこれ超とりかえしのつかないことですからね!?」 そんなかんじで4人があーだこーだ言い合っていると 「お~い、もういいだろ?」「私たちもう帰るわねー」「「「「ッ!!?」」」」」 上条と美琴が帰ろうとしていて、すでに靴を履き終わっていた。 手まで繋いでおり帰る気満々だ。 当然、全く問題が解決していないのでまだ帰られるわけにはいかず、一方通行が慌てて引き止めに入る。「おい、もうちょっと待て。まだ話が……」 ガラにもなく慌てる一方通行、引き止めるために上条の右腕を掴む。「おいおい引っ張るなって! マジで何かあったのか?」「……あったかどうかって聞かれるとあったンだがなァ…………」「なんだはっきり言えよ。 ていうか今日のお前らなんかおかしいぞ?」「……あのな、おかしいのはお前らのほうなンだよ!!」 いい加減イラっときたので、一方通行は上条の右手を掴み、強引に引き戻そうとした瞬間―――「――――――あァ?」 一方通行の動きが止まった。 上条の手を握ったままピタリと、動かない。「ど、どうした一方通行? なんかあったのか?」 あまりに動かないため、浜面が声をかけると、一方通行がようやく上条の手を離し振り返った。 その顔は「おい、どうしたんだよ!! 「…………あァ……言葉で説明するよりコイツの手、触ったほうがわかりやすいってもンだ」「は? 手? 手って……『幻想殺し』?」 浜面は一方通行に言われるがまま、わけがわからないという表情をしている上条の右手に軽く触れた。 その瞬間――――――「あ…………」「な? わかっただろ?」 浜面は目を見開き、一方通行と目を合わせた。 2人が今起きている全ての状況を理解した瞬間だった。 しかし、残された番外個体と絹旗はまだ一切理解できていない。「ちょっとどういうこと? ミサカたちにも説明してくれない?」「そうですよ。 何2人で超わかった感じになってるんですか」 などと不満を口にする2人に、一方通行が重い口を開く。「…………だから、間違ってたのは俺らのほうなンだよ」「…………は? だからどういうこと?」「記憶が違ってたのは、俺らのほうだったってことだよ……つまり『ヒーローと超電磁砲は付き合ってる』ってことのほうが正しかったンだ」「「え」」 ――――実に簡単な話だった。 『上条と美琴がラブラブ』ということは、今となってはごく普通のこと、誰でも知っているレベルだ。 半年ほど前に付き合い始めてからバカップル一直線で、今日の光景は何もおかしなことではない、原因こそ不明だがおかしかったのは一方通行や浜面たちだった。 彼らの記憶は半年以上遡り、『まだ上条は鈍感だし、美琴は素直になれないツンデレ』というものに変換されており、まさか自分たちの記憶がおかしくなっているなんて思いもしなかった。 そんなこんなで番外個体と絹旗も(美琴が若干睨む中)上条の右手を触り、全てを理解した。 しかし、肝心?の上条と美琴は全く状況を理解できていない。 美琴に至ってはちょっと不機嫌になってしまっていて、「あのさー……さっきから記憶が違ってたとか一体何の話してんの? 長々と時間とられるし、手触るし……」「……いや………なんでもないです……デートの邪魔してすいませんでした…………」 いたたまれずに謝る浜面。 すると上条が 「まあ何かあったんだろうけど、その様子だとどうせくだらないことだったんだろ?」「うお、さすがヒーロー。 ミサカもびっくりの大正解だよ☆」 やっぱりなー、とつぶやく上条。 こういうことに関する鋭さは天下一品だ。 上条はさらに詳しく話を聞こうとしたのだが、「ねぇ……そろそろ行かない? 結局大丈夫なんでしょ?」「ん……そうだな…………じゃあお前ら、俺達はもう行くわ。 今度は邪魔すんなよ?」 こうして上条と美琴は『いつも通り』いちゃいちゃしながら、一方通行らの元から去っていった。 それを見届けた4人は、大きなため息をついて部屋へと戻った。 しばらく沈黙が続いた後、「あー……なんか俺バカみたいだな…………ただアイツらの邪魔しただけじゃん……」「それを超言わないでくださいよ浜面。 私だって超わかってますから……」「てかさ、さっきから言ってたことだけどなんでこんなことになったわけ? 原因は?」「さァな……今の感じから第6位が原因って線はないだろうから、残された原因は……ン? 土御門の野郎からメールか?」 ふいになった携帯の着信音。 一方通行が送られてきたメールを開いてみると、『イギリス清教の新人魔術師のミスで 一時的に学園都市内部で記憶変化魔術か発動した。 多分気づいているやつが多数いるはずだが、 もう5分もすれば元に戻るから気にするな』 という内容だった。 読み終えた一方通行と3人は 「…………明らかに連絡がおせェだろうがあの野郎……1 発 ぶ ん な ぐ る 」「「「(超)同意」」」」 この数十分後、理由もわからずに襲撃される金髪グラサンの姿があったとかどうとか
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1076.html
「じゃあ私達はこれで失礼します。行きましょうか火織お姉ちゃん、建宮さん」 「……な、なぁ建宮。飾利、一体何やったんだ?」 「わしは飾利姫から直々に付けて下さった耳栓のお陰で何も聞こえんかったのよ。ただなぁ、佐天と絹旗がもの凄く怯えてたことは分かったんだが……」 建宮の思い出すのも辛そうな表情、神裂の察して欲しいという視線を受けて当麻はそれ以上の追求を止めた。 一方で初春は美琴に二つの包みを渡し、ある頼みごとをする。 「じゃあこのチョコを対馬さんと浦上さんに渡してもらうように白井さんに頼んでもらえますか?」 「オッケー。ところでさ、私と当麻へのチョコは?」 「それなら和室で気絶してる見知らぬ二人が持ってると思います。私はどこにあるのか分からないので見知らぬ二人に聞いてもらえると助かります」 「あ、うん、それはいいんだけどさ、か、飾利? 見知らぬ二人ってもしかしなくても……涙子と最愛?」 対馬と浦上へのチョコを黒子に渡すように頼まれた美琴だが、初春の『見知らぬ二人』発言に途惑ってしまう。 美琴の質問に答える初春の笑顔、いつも通りの笑顔なのだが得体の知れないプレッシャーを上琴、神裂、建宮は感じていた。 「あの二人は私の知ってる涙子さんと最愛さんじゃありません♪ 当麻お兄ちゃん、見知らぬ二人に伝えてもらえますか? 謝るべき人に謝るまで許してあげないって♪」 「お、おう、分かった……。後でお前達の作ってくれたチョコ、美琴と一緒に食べさせてもらうからな」 「お二人のお口に合えばいいんですけど。じゃあ今度こそ失礼しますね♪」 こうして初春、神裂、建宮、帰る際に呼び寄せたシェリーを見送った上琴は思った、ちょっと風変わりな家族のようだと。 ちなみに初春の佐天&絹旗に対する『見知らぬ二人』扱いだが、謝るべき人間が建宮だと二人が気付くまでの一週間もの間、続けられたという。 そして場所はリビング、シェリーが帰った今、ウエディングチョコケーキを食べているのはインデックスのみ。 グロッキー状態でリビングのソファーにもたれかかっているのは頑張った月夜、ステイルだった。 「さて、このウエディングチョコケーキも名残惜しいけど充分に幸せな味を堪能したんだよ。後は一気にいただきます!!」 今までゆっくり食べていたのが嘘だったかのようにインデックスは4割残っていたウエディングチョコケーキを僅か3分で完食してしまった。 その事実に呆気に取られている当麻だが、彼の今日一番の不幸(多分)はここから始まる。 「やっぱすげーなー、インデックスは。食べることに関しちゃ世界一だな……ってインデックスさん? わたくし上条当麻の顔に何か付いてますか?」 「えっとね、とうまの口の周りに少しだけどチョコが付いてるんだよ。あととうまの体から美味しそうなチョコの匂いがするかも」 インデックスの警察犬も裸足で逃げ出す嗅覚、土御門さえも凌駕する観察眼(食べ物限定)に当麻はウッと唸ってしまう。 そんな当麻の変化など恋人の美琴にはお見通しで涙目で睨みつける。 当麻は思った、神裂の恩返しチョコを本人もいないのにどう説明したらいいものかと。 「美琴?確かに俺はチョコを持っているけど、これは神裂が今までのお礼って言ってたんだ!!本当だ!!」 「……どうせ私は神裂さんみたいに胸が無いから浮気に走るんだよね」 「とうま、胸で人を判断するのはどうかと思うんだよ?」 ヤバい、二人どころか周りの人間全て睨んできた。ヒシヒシと殺気が感じるくらい。 上条はとことん自分は不幸な人間だと、心底思った。 「……誰も信じてくれないのか」 はぁ、と溜め息をつき、美琴を見つめる。 「美琴は信じてくれないのか?」 さすがはフラグ策士一級の上条当麻、無自覚にも美琴のハートを射ぬいてしまう。 美琴は上条にガシッ!!と抱き付き、無理矢理に唇を奪う。 十分相手の唇を堪能すると、唇を離した。 「そんなことない!!誰も当麻の事信じなくても私は信じる!!」 「うぅ……美琴、ありがとう」 周りの人間はこの光景を見ると、邪魔ができ無くなってしまう。 二人の空間の邪魔しないため、一同はこっそりと外に出た。 「あのね、当麻」 「ん?どうした美琴?」 「これ」 美琴のポケットから出てきたのはチョコだった。 「よっしゃ!!美琴のチョコゲット!!」 「ねえ、開けてみて」 美琴の言うことに従い、包みを広げる。 中のチョコはシンプル、だけど愛情たっぷりのチョコだった。その証拠に……、 「み、美琴の口づけつき!?」 「そっ、食べてみて」 美琴の作ったチョコをひとかじりすると上条は、 「甘い!!そしてうまい!!」 心のそこからそう思い、叫んでしまった。 「良かった……」 美琴が安堵すると、上条もポケットからチョコを取り出した。 「美琴、実は俺もチョコ作って来たんだ」 「えっ?」 美琴は何故当麻も作ったのか疑問に思った。 そして当麻はポケットからチョコを取り出した。 「ねえ、どうして私にチョコを作ってくれたの?」 「それは美琴だけにチョコを作るのは嫌だったから俺も作ったんだ。」 「当麻、ありがとう!!」 そして二人はキスをした。 時は過ぎ、午後7時、黄泉川のマンションで一打がお互いのチョコを食べ合っていた。 一方通行の膝の上に打ち止めが座るスタンスはすでに当たり前なのだが、一方通行にはまだ照れが残っていたりする。 「あなたの作ったチョコが美味しいのはいいんだけどミサカのよりも美味しいことにミサカはミサカは落ち込んでみたり……」 「ンなこたァどうでもいいだろうが……。俺はてめェの作ったチョコの方がその、何だァ、す、好きだからよォ」 一方通行に褒められたことが嬉しくなった打ち止めは思いっきりハグをし、一方通行もまた照れつつも素直にされるがままになっていた。 その様子を微笑ましく見ていたのは晩ご飯の後片付けを終えた黄泉川と芳川だった。 「おーおー相変わらず見てつけちゃってくれるじゃんよ」 「もう二人はすっかりラブラブね。こちらとしては一方通行がからかい甲斐が無くなるのはちょっと寂しいけど」 「……なァ、黄泉川、芳川。打ち止めをよォ、学校に通わせてやらねェか? こいつの為にも」 打ち止めは最初は茶々を入れようとしたが、一方通行の真面目な雰囲気を受けて黙って聞くことにした。 黄泉川と芳川はお互いに顔を見合わせたあとで、一方通行の提案に賛成の意を示した。 「ま、いいんじゃないか。打ち止めに勉強は必要無さそうだが、同年代の子供の友達を作ることは必要だからな。手続きはこっちでやっとくじゃん」 「悪ィな、俺のワガママ聞いてくれてよ。……どうした? 芳川」 「いえね、学校に通うのはいいんだけど名前はどうするの? まさか『御坂打ち止め(ラストオーダー)』にするつもりじゃないわよね……。あと両親は?」 「あァ、そりゃァ確かに無理があるな……。名前はそうだな、美しく咲く華で美咲華でいいんじゃねェか? 親はてめェらのどっちかでいいだろ」 打ち止めの学校通いの問題点をやや投げやり感は感じられるものの、あっという間に解決してしまった一方通行。 しかしジト目で一方通行を眺めてきたのは打ち止め、名前自体には文句は無かったものの、適当感に納得が行っていない様子。 「あなたのセンスに文句を付ける気は無いけど当て字っぽいのに釈然としないってミサカはミサカはぶーたれる」 「しゃあねェだろ。苗字を一人称にするなんざただの変人だろうがァ……(ちょっと面倒だったってなァ言えねェな……)」 「じゃあ妹達(シスターズ)はどうなるのってミサカはミサカは突っ込んでみたり」 「……あいつらはあいつら、てめェはてめェだ。俺にとってのと、特別はて、てめェだけだ……。名前に選んだ漢字もお、俺なりに考えたンだ。素直に受け取っとけ」 顔を真っ赤にさせてソッポを向いた一方通行を可愛く思った打ち止め、黄泉川と芳川が居るにも関わらず彼の頬にキスをした。 突然のことに慌てる一方通行だが彼も打ち止めも気付いていない、黄泉川と芳川がそれどころでは無かったことに。 「あの子の親には私がなるじゃん! 桔梗、悪いがあんたの出る幕は無い、大人しく引き下がってくれると助かるじゃんよ」 「一方通行ならのし付けて譲るけど打ち止め……じゃなかった美咲華なら話は別。絶対に譲れないわ。たとえ黄泉川、あなたでもね」 打ち止めの養母の座を巡る黄泉川と芳川の戦い、決着が付くのは4月に入ってからのことだった。 その頃の第八学区のとあるマンション、ポリアモリーカップルはまったりしていた。 真昼は真夜の作ったチョコフォンデュー、赤音は同じく真夜が作ったフォンダンショコラを食べ、真夜は後片付けの最中だ。 「二人ともー、味の方は大丈夫ー?」 「おー♪ 真夜の作ったモンに文句なんざ有るわけねーだろ♪」 「私もだよ~。ありがとね真夜君、こんな素敵なバレンタイン初めてだよ♪」 後片付けを終えた真夜は三人の時の指定席、真昼と赤音の間に腰を下ろす。 「ところでさ、小萌先生が言っていた木山先生の伝言覚えてる?」 「ああ、訓練が無くなったってやつだろ? いいことじゃんか、俺らの自由な時間が増えてデートもし放題なんだぜ♪」 「……そのことなんだけどさ、訓練は続けようと思うんだ。まあ、自主練になるんだけど。も、もちろんデートの時間は増やすつもりだよ! ……ダメ、かな?」 真昼と赤音は真夜ならそう言うと思っていたのか、特に驚く様子も無く自信なさげな恋人の提案を受け入れる。 「いいよ♪ 確かに練習を怠ると能力の劣化にも繋がるしね~。真夜君のそうゆう向上心の強さ、私は大好きだから♪ デートの時間はきっちり増やしてもらうけどね」 「しゃーねーか、やっぱ。真夜がそうゆう奴じゃなかったら俺だって惚れたりしねーもんな。その代わり、デートの時間はきっちり作ってもらうぜ。つーわけで俺も賛成♪」 「ありがと二人とも(半蔵と郭さんは……たまでいいから付き合ってもらおうかな)」 レベルも上がったポリアモリーカップルは決意も新たに更なる進歩を目指すのだった。 こちらはとある居酒屋、小萌と木山は二人っきりで飲んでいた。 「良かったんですか? 木山先生。真夜ちゃん達に訓練は終わりって言って」 「心配要りませんよ。そこで何もしなくなったらそこまでということです。まあ、あいつら、特に真夜は自主練でも始めますよ」 「あー、確かに真夜ちゃんなら納得出来ますねー。それにしても木山先生、子供達のことをちゃんと見てて立派ですー」 「そんなことありませんよ。私はただ後押しするだけ、そこからは彼ら自身の強さですから」 木山は真夜たちが彼女の言う通りに自主練を始める決意を固めたことは知らないが、理屈抜きで自分の予想が的中していることを信じていた。 ジョッキのビールを一気飲みした後で小萌は“ダンッ!”と音を立ててジョッキを置くと、現在抱えている悩みを木山に打ち明ける。 「ところで木山先生、もし自分の居候ちゃんと甥っ子が付き合ってるって分かったらどうします?」 「月詠先生の甥っ子ということは月詠先生と同じく童顔で子供体型で背が低いんですか? だとしたらそれはとても科学的に興味」 「そんなことは関係ないんですーーーーーっ! そりゃあ確かに翔太ちゃんは私と同じで童顔でチビですけど……」 木山の悪意の無い発言に怒った小萌、その後での甥っ子についての評価で自分の首も絞めていることには気付いていない。 相談された木山は何が問題なのか分かっていないので、素直に小萌に尋ねることにした。 「確か居候は『座標移動』の結標淡希でしたね。何か問題でも?」 「それがですね、結標ちゃんが変な目で見られないか心配で心配で……。翔太ちゃんと並ぶと姉と弟にしか見えないんですよ、見た目」 「別に心配するほどのことでは無いでしょう。うちの学校には生粋のそうゆう嗜好の持ち主がいるんですから。それと比べたら問題ありませんよ」 小萌は木山の言う人物が誰なのかすぐに思いつくと、その少年と比べたら大したことじゃないと思うことに。 しかし彼女は知らない、結標が4月に何の相談も無く自分の勤める学校に転入してくるなど。 その当人の結標は小萌の甥っ子にして自分の恋人、月詠翔太の住んでいる寮で二人っきりになっていた。 「結標さん、やっぱりこういうのは恥ずかしいというか…」 「何よ。さっきまで外でも抱き締めてたじゃない。それに結標さんじゃなくて淡希で良いって何回言えば良いのよ。」 今、結標と翔太の状態は先ほど公園で抱き締めていた時と同じように抱き締めあっていたのだ。 また、翔太は付き合い始めたのがほんの数日前なので未だに結標の呼び方が前から呼んできた『結標さん』のままなのだ。 「そういえば、翔太は4月から転校するんだっけ?」 結標は翔太を抱き締めるのをやめ、翔太の転校の事について聞いてみた。 「そうなんだけどさ、小萌おばさんが居る高校なんだよね。」 「そうなんだ。なら私もそこに転校しよっかな。それなら一緒に登校できるし。」 「え、えええええぇぇぇぇぇ!?そ、そんなことしたら僕がさらに恥ずかしいじゃないか!!」 「でも良いじゃない。恋人同士なんだからさ。じゃあもう決めたから。」 結標は小萌にも言わず、4月から勝手に当麻たちの高校に通う事に決めた。 また、小萌がその事を知るのは始業式の二日前だったりする。 (ん?何か忘れている気がするんだが、まあそんな大した事ではないよね。) 「あ、淡希、どうしたの?」 「な、なんでもないなんでもない。それと恥ずかしがらずにしっかりと淡希と言えるようにしてね。」 「分かった。がんばってみるよ。」 結標は多分翔太に関係ないことだと思ったので話をそらした。 また、結標が忘れている事、それはその高校に土御門、一方通行が通っているという事だったりする。 「あ、そういえばこれさっき公園で渡そうと思ったんだけど、これ。」 結標がブレザーのポケットから取り出したもの、それはチョコが入っている箱だった。 「淡希、ありがとう!!」 「うわっ!?」 翔太は嬉しくて結標に抱きついた。 そして結標は急に翔太から抱きついたことに驚いた。 「ねぇ翔太、キスしよ///」 「え!?まだそこまではッ!?」 翔太が何かを言おうとしたとたん、結標は翔太の唇に自分の唇を重ねた。 しかも、ディープキスだった。 「プハッ、あ、淡希いきなりキスをしないでよ///」 「べ、別に良いじゃない。恋人同士なんだからさ///」 「じゃあ仕返しだ!!」 今度は翔太からキスをした。 「はーまづらぁ、正直になっちまえよ?私に欲情してんだろォ?」 「弾丸のキズが入ってる胸で欲情できるわけない。はまづらは私で欲情してる」 「そのキズ付けたのコイツなんだよォォォおおおおおおおおおおおお!!」 「……お願い、お願いだから俺の前でそんなこと言わないでくれ」 浜面は滝壺の部屋で色んな意味で絞られていた。 どんな意味かって?少なくとも性的な意味ではないので安心してほしい。 浜面は嘘発見器を頭につけられ、今度はチェーンで巻き付かれた。 二人が起きた瞬間襲われたのだ。 「不幸だ……」 浜面は知り合いのレベル0の口癖を呟くのだった。 ~~数時間後~~ 麦野は体の調整と言い、どっかに帰っていった。 「はまづら、大丈夫?」 「……色んな意味で、もうダメ」 滝壺は弱りきった浜面のため、鞄からチョコを取り出した。 「はまづら、あーん」 「お、おお!!滝壺のチョコ!!いただきます!!」 カプッ!!とチョコをひとかじり、浜面のリアクションはもちろん。 「うまい!!」 「よかった。はいはまづら、もう一回あーん」 「あーん」 この後、浜面が滝壺にチョコを渡し、驚かせるのは書き記す事でもない。 「結標さん、やっぱりこういうのは恥ずかしいというか…」 「何よ。さっきまで外でも抱き締めてたじゃない。それに結標さんじゃなくて淡希で良いって何回言えば良いのよ。」 今、結標と翔太の状態は先ほど公園で抱き締めていた時と同じように抱き締めあっていたのだ。 また、翔太は付き合い始めたのがほんの数日前なので未だに結標の呼び方が前から呼んできた『結標さん』のままなのだ。 「そういえば、翔太は4月から転校するんだっけ?」 結標は翔太を抱き締めるのをやめ、翔太の転校の事について聞いてみた。 「そうなんだけどさ、小萌おばさんが居る高校なんだよね。」 「そうなんだ。なら私もそこに転校しよっかな。それなら一緒に登校できるし。」 「え、えええええぇぇぇぇぇ!?そ、そんなことしたら僕がさらに恥ずかしいじゃないか!!」 「でも良いじゃない。恋人同士なんだからさ。じゃあもう決めたから。」 結標は小萌にも言わず、4月から勝手に当麻たちの高校に通う事に決めた。 また、小萌がその事を知るのは始業式の二日前だったりする。 (ん?何か忘れている気がするんだが、まあそんな大した事ではないよね。) 「あ、淡希、どうしたの?」 「な、なんでもないなんでもない。それと恥ずかしがらずにしっかりと淡希と言えるようにしてね。」 「分かった。がんばってみるよ。」 結標は多分翔太に関係ないことだと思ったので話をそらした。 また、結標が忘れている事、それはその高校に土御門、一方通行が通っているという事だったりする。 「あ、そういえばこれさっき公園で渡そうと思ったんだけど、これ。」 結標がブレザーのポケットから取り出したもの、それはチョコが入っている箱だった。 「淡希、ありがとう!!」 「うわっ!?」 翔太は嬉しくて結標に抱きついた。 そして結標は急に翔太から抱きついたことに驚いた。 「ねぇ翔太、キスしよ///」 「え!?まだそこまではッ!?」 翔太が何かを言おうとしたとたん、結標は翔太の唇に自分の唇を重ねた。 しかも、ディープキスだった。 「プハッ、あ、淡希いきなりキスをしないでよ///」 「べ、別に良いじゃない。恋人同士なんだからさ///」 「じゃあ仕返しだ!!」 今度は翔太からキスをした。
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/3777.html
*アニメ新規情報のみの索引はこちら ア行 一方通行(アクセラレータ) 一方通行(アクセラレータ)【能力名】 一方通行の杖 伊東(いとう) 空気分断(エアロセパレイター) エステル=ローゼンタール 演算補助デバイス カ行 カエル顔の医者 学園都市(がくえんとし) 禍斗(かと) 棺桶 棺桶【プロトタイプ】 木寺実莉(きでらみのり) 窮奇(きゅうき) 渾沌(こんとん) サ行 念動能力(サイコキネシス) 妹達(シスターズ) 死霊術(しりょうじゅつ) 屍喰部隊(スカベンジャー) ステルスハイド(未編集) 聖音高等学校(せいいんこうとうがっこう) 清ヶ(せいけ) タ行 対一方通行用兵器 大気連続体力学研究所 鷹田杳子(たかだようこ) ダックスフント 超能力(ちょうのうりょく) 超能力者(ちょうのうりょくしゃ) 饕餮(とうてつ) ナ行 ナンバーズの悪霊 名荷原弘見(なかはらひろみ) ナル ネイサン=ローゼンタール ハ行 発火能力(パイロキネシス) 菱形蛭魅(ひしがたひるみ) 菱形幹比古(ひしがたみきひこ) ブリーダー 鳥瞰把握(プレデター) ヤ行 薬丸(やくまる) 芳川桔梗(よしかわききょう) 黄泉川愛穂(よみかわあいほ) ラ行 打ち止め(ラストオーダー) リーダー(屍喰部隊) 強度(レベル) 超能力者(レベル5) A~Z DA(ディシプナリー・アクション) 『DA』の戦闘員
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/2304.html
【種別】 行事 【初出】 アニメ とある科学の超電磁砲 第一九話 【解説】 普段は一般には開放されていない常盤台中学学生寮が、年に一度、外部に開放される文化祭のようなイベント。 開催時期は明確に描写が無いが夏休み期間中の1日であるようで、招待客のみ入場が可能。寮生は全員メイド服を着用しており、寮生による生け花等の展示が行われる。 入場口では警備員の黄泉川と鉄装が警備を固めていた。 振る舞われる料理は繚乱家政女学校の監修で舞夏が手伝いに来ていた。 招待客の中にインデックスがいたため、その大食いに舞夏は(おそらく自分で招待したのであろうが)多忙を強いられた。 庭のステージではチャリティーオークション(収益金は置き去り(チャイルドエラー)の施設に役立てられる)のほか、 美琴によるヴァイオリンの独奏が行われていた。 演奏を前にして柄にもなく緊張する美琴の前に、インデックスを探す上条が現れる。 記憶を失った上条にとって美琴は「初対面」だったが、美琴は「からかいに来た」と思い、激昂。 上条は逃走するが、ひとしきり激昂したことで落ち着きを取り戻した美琴は演奏を成功させた。